対談:積水ハウス 瀬戸洋信 氏 × 船井総合研究所 吉崎誠二
積水ハウスが取り組む環境への貢献
吉崎: 本日は再生住宅「エバーループ」という商品を通じて、環境に配慮した循環型の住まいづくり実現に向けた取り組みをされている積水ハウス株式会社ストック事業部 事業部長瀬戸洋信氏に、立ち上げからの経緯と現状に関してお話を伺います。
まずは再生住宅「エバーループ」のご紹介からお願いします。
瀬戸氏: 弊社が建てた住宅を、弊社で純正リフォ-ムして、次のご家族への橋渡しをする住宅の再生流通事業です。
住宅を循環させて長寿命化することにより、消費型社会から循環型社会への先導的モデルとなればと考えます。事業部として立ち上げてはや1年ようやく販売物件も増えてきました。
吉崎: 立ち上げられた経緯は何だったのでしょうか?
瀬戸氏: そもそも弊社の建物はインフィル部分(設備・内装)に関しては老朽化が進んでも、スケルトン部分(構造躯体)は再生可能な建物です。
この再生住宅に保証を付加する事により新築市場でもなく中古市場でもない新しい市場を切り開く事ができると考えました。
吉崎: 中古再生事業はここ数年注目されてきましたが、そもそも事業を成功させるには、建物の構造躯体がしっかりしている事、また、リフォームやアフターメンテナンス・販売に関する部門がないと実際なかなか難しいですよね?


瀬戸氏: はい。その点で弊社はすべての条件面が揃っていたと思います。
吉崎: それでも立ち上げ当初は非常に苦労されていましたよね?各工程を自社内で完結できないと、利益面で厳しいと思われますが、その点はいかがですか?
瀬戸氏: 当初は我々事業部の勉強不足もあり、商品に対する魅力づくりがなかなかできませんでした。
ただ、購入物件が工事に入りいざ販売をしていく中で、少しずつ何が必要なのかが判り、完成物件をいろいろな部署に見てもらう事により事業意義を理解してもらう事ができ、システムがどんどんシンプル化する事ができました。まだまだ、利益面では厳しい面はありますが、今は新市場の開拓が最優先と考えています。
吉崎: 注文住宅ぐらいの利益確保の可能性はあるんでしょうか?
瀬戸氏: それは難しいと思います。その分新築住宅より回転率を高めて利益確保する必要があります。
吉崎: 買取の際の査定方法は独自のやり方をされているとお聞きしました。具体的にお話いただけますか?
瀬戸氏: はい。
エバーループ独自の査定方式を採用しています。通常の査定方式では建物は20年から25年で評価がゼロになります。我々の査定方式は「最分譲価格からの逆算方式」を採用しています。
吉崎: 一般的には仲介会社の査定では、ある程度年数が経過すれば、建物評価が少なく大事に使用された方、お金をかけて手を加えられている方も築年数が同じと言うだけ建物価値を同等と判断されるのは納得できませんよね?
瀬戸氏: そうなんですよ。
そこで「逆算方式」の採用により、建物をできるだけ評価しようと考えたわけです。
吉崎: 保証システムも独自の方法を採用されていますよね?
瀬戸氏: エバーループに関しては全物件「ユートラス保証」を付けています。 構造躯体・防水に関して10年の保証を付けることとカスタマーズセンターによる定期点検を付ける事により、弊社新築住宅と同様のサービスを受ける事が可能となり、エバーループ購入者に対して安心も同時に購入して頂く事になります。
吉崎: 住宅を手放す側のオーナー様 購入側のオーナー様の反響はいかがですか?
瀬戸氏: 実際、エバーループのご紹介をさせて頂くと皆さん非常に興味を示されますね。弊社は次の新しいお住まいに関してもトータルでお手伝い出来ますし、その場合は売却と購入のタイムラグに関しても融通がききます。
吉崎: 売却を検討されているオーナー様にとっては、仲介で売りに出すと、どうしても物件が市場にさらされてしまうことに抵抗を感じる方も多くいらっしゃいますし、また、何より仲介手数料もかかってしまいますしね。
ただ、再生後の住宅をご覧になられると、少々複雑に思われる方もいらっしゃるのではないですか?
瀬戸氏: やはり後から見に来られると非常に驚かれますが、特に今のところ問題はありません。
吉崎: 長年愛着を持ってお住まいになられた住宅が予想以上の価値で次の方に渡るということは、逆に嬉しいことなのかもしれませんね。
瀬戸氏: 購入される側にとっても、ほとんどのお客様が最初は新築かと思ったと驚かれます。最終的には、中古住宅であっても保証面の充実に安心して購入されますね。エバーループは新耐震基準をクリアすることで、不動産取得税、登録免許税、ローン控除が新築同様に受けられます。
また、銀行とも提携しており、新築と同条件でほぼ100%の融資がおります。この点は一般の中古住宅購入にあたっての不安点をエバーループが解消する、大きな魅力の一つなのではないでしょうか?


吉崎: そんな双方のオーナー様にとって魅力的なエバーループ物件も、まだまだ需要に比べると地域に偏りがあるようですね。
瀬戸氏: 関西圏・首都圏・中部圏3エリアにて展開中なのですが、購入物件数は現在、関西圏・中部圏がほぼ同じ件数を購入しており、首都圏が両地区に比べると少し少ないのが現状です。ただ、首都圏でも埼玉県・神奈川県は比較的多く購入しています。
吉崎: 都内はなかなか買い取れる物件にも限りがありそうですね。
瀬戸氏: そうなんですよ。都内はやはり、開発された分譲地が少なく昔から住まれている方が多く、手放される方が少ない事も影響しています。例えば、道路付けが悪い。都内は前面4m道路がほとんどですが、関西の感覚では、5mが当たり前だったり……また、販売を考えると、特徴が少ない住宅が多い。そもそも、手離す方が少なかったり、情報そのものが乏しいという理由もあります。
吉崎: 地域密着性の高い事業ですから、やはり営業担当者はエリア制をとられているんでしょうか?
瀬戸氏: はい、エリアごとに担当者は分けています。対象予定エリアを告知すると、双方のオーナー様からのお問い合わせが多く、需要が大きいことを実感します。先日、国土交通省の補助金認定を受けました。30棟枠で、1棟あたり最大200万円まで支給されます。社会的にも認められる商品として、着実に展開していければと考えています。
吉崎: 最後に、目標数値等、今後のビジョンに関してお聞かせ下さい。
瀬戸氏: 目標数字は出していないんですよ。当面は、首都圏と関西圏で業務そのものを順調に回転させていくことが目標です。まずはその2エリアを中心に浸透させて、エリア拡大を図っていきたいと考えています。将来的には全国展開を目指したいですね。
高齢化社会が進む中で、エバーループ住宅を通じて、結果的に街そのものの活性化につながればと考えています。団地そのものを再生することで、一つのコミュニティを形成し、高齢者も若者も混在する活気ある街づくりに貢献できたら素晴らしいと思います。
吉崎: そういう意味では、積水ハウスにおけるストック事業部の位置付けは社会貢献に通じる非常に意義深い部署ですよね。本日は貴重なお話、有難うございました。
業界最大手の積水ハウスが新しく始めた、この事業にとても興味を抱いていた。地球規模でエコが叫ばれている中で、スクラップアンドビルドを前提としたハウスメーカーのビジネスモデルはどう進化していくのか。業界最大手の企業には、社会性の追及をする、という使命があると、常々講演などで訴えてきた。
このストック事業部が手掛ける、エバーループ事業はまさにその事を踏まえた新規事業である。住宅着工戸数が年々減少の一途を辿り、近い将来100万戸をきるといわれている、住宅業界の新しい息吹となりうるのか。
立ち上げた頃は、順調には行っていなかったようだ。以前瀬戸部長にお会いした時はまだ、立ち上げたばかりで、部長も悩んでいる様子だった。 あれから、半年が経って今回お会いした時の表情は、写真にもあるように、晴れやかな表情だ。自信に溢れた表情だった。
このビジネスモデルの最大のポイントはその査定制度にあると思う。自社が立てたその建物をどう査定するのか。そしてその金額で買い取り、全面的なリフォームをして再販するわけであるから、その第一歩としての査定はとても重要だ。
そして、もう一つが再販した建物に対する保証をどうするのか。これについては、対談で詳しく述べてくださった。エバーループで新しくなった商品を目の当たりにしたお客様は、『新築と全く変わらないことに、驚かれる』という。この事業が大きくなった時、ハウスメーカーとしての主力商品である、注文住宅、新築戸建住宅とどう共存していくのか。それらを踏まえたビジネスモデルのどう育てていくのか。
今後の積水ハウス ストック事業部に期待したい。

1997年 12月船井総合研究所入社。戦略プロジェクト本部 次長。
電鉄会社・大手ディベロッパー・ハウスメーカー・マンション関連企業、など、不動産関連業・住宅関連業を中心にコンサルティングを行う。
調査・分析から、経営戦略立案、商品開発、営業戦略構築 等これまで様々な業務の全体責任者として業務に携わる。
2006年~ 沖縄大学 人文学部 非常勤講師。
















