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業界トップインタビュー

対談:ムジ・ネット 浅田直熙 氏 × 船井総合研究所 久木田光明

“無印良品らしい”住宅を目指すムジ・ネット株式会社
業界常識に囚われない視点を持った商品づくりと販売手法
ムジ・ネット株式会社 代表取締役社長 浅田直熙 氏

久木田: 本日は「無印良品」ブランドで生活雑貨小売業を展開している(株)良品計画のグループ会社でありながら、「無印良品の家」を開発・販売しているムジ・ネット株式会社 代表取締役社長 浅田直熙氏に、立ち上げの理由から経緯・現状に関してお話をお伺いします。

まずは、良品計画の事業ドメインとは異なる住宅事業を立ち上げられた理由をお聞かせください。

浅田氏: 2004年に事業を立ち上げたのですが、当社が住宅事業を立ち上げた理由は3つあります。
1つは、もともと良品計画は「生活を考える」というコンセプトの元、「暮らし」を提案していたという背景があったということ。
2つ目に、ムジ・ネット(株)は無印良品のネット販売も運営しているのですが、そのネットの立ち上げ時、お客様に「無印良品に何を望みますか」というアンケートを実施したところ、「無印良品の家を作ってほしい」という声が意外に多かったということ。
3つ目は、良品計画として現在約7500アイテムを扱っており、その製品を入れる器(=家)を作りたいという考えが当初から潜在的にあったということ。
これらが、住宅事業を立ち上げるきっかけになりました。

久木田: 良品計画は生活雑貨の小売業を展開されているわけですが、住宅メーカーでない無印良品からみた今の日本の「住宅」とはどのように映っていたのでしょうか?

浅田氏: 住宅事業を立ち上げる際に、住宅に関して調査をしてみるといくつかの疑問点が出てきました。
1つは、日本の住宅の寿命です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、現在世界一の長寿国にも関わらず、日本の住宅の寿命は約30年と言われています。アメリカの55年やイギリスの77年と比較すると、これはあまりにも短すぎるのではないかという疑問。
もう1つは、現在の住宅の販売方法では、モデルハウスやカタログなどに膨大な販促費がかかっており、それがお客様への売価に上乗せされている。その価格は、お客様にとって本当に最適な価格なのか?
このような点にある意味批判的な思いがあり、挑戦してみようという気持ちがありました。

(対談中写真)奥:ムジ・ネット株式会社 代表取締役社長 浅田直熙 氏 手前:株式会社船井総合研究所 久木田光明

久木田: なるほど、良品計画としてのバックボーンと現在の日本の「住宅」に対するアンチテーゼから住宅事業は出発したのですね。2004年に事業を立ち上げられてまだ4年と短期間ではありますが、現在までの販売状況はいかがでしょうか?

浅田氏: 実際に住宅の販売を開始したのは2006年なのですが、今年の上期までに累計で約150棟を販売しています。ありがたいことに、おかげさまで現在は月に10棟を超えるようになってきており、今期は120~150棟の販売を見込んでおります。

この数字は、自社のみで販売している数ではなく、全国のFC加盟店(工務店など)による販売実績も含めた数字でして、自社は有楽町で直営店を展開しています。
先にお話したように、販促費を出来る限り削減するため「モデルハウスやカタログは極力作るのをやめよう」と考えていたのですが、実際に住宅の販売を始めてみると、住宅という商品は、お客様が見て触れて実感しないと購買に結びつかないことが分かり、直営店である有楽町にモデルハウスを設置することになりました。
また、カタログに関しても、当初はネットを通じて情報を公開し、お客様が十分な家づくりの情報を得た上で商談に入ると考えておりましたが、間取りなどを理解するためにはやはりカタログが有効であることがわかり、必要最低限の情報しか掲載していませんが、用意することになりました。
モデルハウスやカタログを用意したことは、お客様の理解度を向上させ、販売数が伸びた一つの要因であると思います。さらに、FCの加盟増加にも寄与したと考えています。

久木田: 今までの住宅メーカーがやっているから、うちもとりあえずやっておこうという考え方ではなく、まずはいい意味でのゼロからのスタート、つまりは素人発想で「本当に必要なのか?」と問いかけ、必要だと判断したら準備するという順序を取られているのですね。これがある意味、今の「無印良品の家」の根本的な強さにも繋がっているのでしょう。
やはり商品自体も、他の住宅メーカーとは違ったコンセプトや特徴があるのでしょうか?

浅田氏: 当社の住宅のコンセプトは「永く使える、変えられる」というものです。
そのため、当社の住宅は「SE構法」という工法を採用しています。
簡単に説明すると、強度の高い集成材を用い、強固な金具で留めていく工法です。この工法は、国土交通省が認定した構造計算システムで、台風、地震、積雪などの自然災害についての安全シミュレーションを行っており、科学的根拠に基づいた耐久性を持つ住宅を作ることが可能となります。その為、我々は当初からこの工法にこだわっているのです。

一方で「変えられる」ということでは、「スケルトン(構造体)+インフィル(内装・設備)」(以下SI)の考え方を取り入れています。SIの考え方を取り入れることで、子供の成長や、ライフスタイルの変化に合わせて、自由に、簡単に、間仕切り壁の位置を変更することなどが可能となります。さらに、SIを採用することで、建築廃材の出る量を大幅に削減するという利点も重要なポイントです。
その他として、「外断熱」を採用することで、快適性を追求した住宅となっています。
このような「永く使える、変えられる」という考えを家づくりに取り入れたことを評価していただき、建築家の隈研吾氏に監修していただいた「窓の家」は「2008年度グッドデザイン賞 ベスト15」に選出されました。(11月6日に最終審査の発表があり、金賞を受賞)

久木田: 御社の「木の家」もグッドデザイン賞を受賞されていますよね。現在、住宅業界は「ストックからフロー」に移行しようとしていますが、その流れには必要なポイントを押さえた住宅という印象を受けます。

「窓の家」外観「窓の家」内観

「木の家」外観「木の家」内観

久木田: 次に販売の方法についてお聞きしたいと思います。御社には住宅メーカーにありがちな、販促手法、営業手法を含めて「押し売り営業」的な要素はあまり見受けられないように感じますが、どんなことに気をつけて、どのような販売方法を採っているのでしょうか?

浅田氏: 来場者が何をきっかけにモデルハウスに来場しているかというと、「WEBを見て」が最も多く、次いで「店舗のポスターを見て」が多くなっています。
WEBに関しては、ネットストアーの会員数は180万人、住宅の会員が70万人おり、これらの会員の方が見込み客となっていますね。一部のFC加盟店ではポスティングを実施しているようですが、基本的には興味のあるお客様が情報を収集していただくというスタイルをとっています。

また、モデルハウスでの営業は、販売員をインフィルコーディネーターと呼んでおり、売ることよりも生活の提案に重きを置いています。さらに、立ち上げ当初は、来場者アンケートもお客様が嫌がるのではないかとの考えから実施しておりませんでした。
このような点からも通常の住宅メーカーとは違った印象を持っていただける要因になっているのかもしれません。(現在アンケートに関しては、住宅を求めている人にだけ答えていただくようになっています。)

久木田: ということは、モデルハウスに来場するお客様は、無印良品と何らかの係わりがある方がほとんどなのでしょうか?

浅田氏: 現在の購入者のほとんどが無印良品のファンの方ですね。年齢でいうと30代中頃が多いようです。
ちなみに、来場者の大半が「無印良品の作った家はどんなものか見に行こう」というお客様ですので、今すぐ購入される方はやや少ないのですが、その方たちも潜在顧客として中長期のお付き合いを考えています。

久木田: 現在の購入者のほとんどが無印良品のファンの方ということは、やはり無印良品ブランドは住宅事業にとっても強みになっていると言えますね。

浅田氏: そうですね。象徴的なのは、建築現場での周囲の皆様の反応ですね。近隣の挨拶をすると「無印良品が家を建てるの?」と驚かれる方がほとんどですが、工事をしている期間に苦情が発生したことはないそうです。
また通行人もよく立ち止まって見学していかれるそうです。現場の監督から非常にやりやすい現場だと言っていただいたこともあります。

無印良品のブランドはプラスの効果も大きいですが、進め方によっては一転してしまうとも認識しています。無印良品の商品は、雑貨をはじめ住宅もどこでも買えるものしか扱っていません。つまり、商品を購入してくださったお客様はどこか一部分だけでも無印良品の思いに共感してくれた方であると考えることが出来、その共感を裏切るような行為をすれば、会社が潰れてしまうと本気で考えています。

久木田: それでは最後に今後の事業展開を教えてください。

浅田氏: 戸建に関しては、無印良品のファンが買いやすいような商品を開発していきます。また、マンションのように、いろんな分野の会社とのコラボレーションを検討しています。特に、省エネや地球環境保全などの分野で積極的にかかわり、それもただの啓蒙ではなく、無印良品の家が実際の効果を生み出していきたいと考えています。

良品計画からは利益目標や棟数目標は特に課せられていないのですが、先に挙げたような無印良品のブランドを更に高めるような仕事をしっかりと進めていきたいと考えています。

久木田: 御社の住宅事業は住宅に対して既存の考えに囚われない視点を持ち、無印良品のブランドを生かし高めていく。まさに無印にしか出来なかったモデルといえるのかもしれませんね。本日は貴重なお話を、ありがとうございました。





経営コンサルタント 久木田光明の視点
左:ムジ・ネット株式会社 代表取締役社長 浅田直熙 氏と、左:株式会社船井総合研究所 コンサルタント 久木田光明 まるで「無印良品の展示場」を想像させるような心地よい空間で私たちを迎えてくれた良品計画の本社ロビー。今回の対談を快く受けて頂いた浅田社長は、終始、人柄が滲み出ていらっしゃるような笑顔で、「無印良品の家」についての熱い思いを語って頂いた。


「無印良品の家」は、立上当初から我々も「あの『無印』が住宅業界へ参入」という事で非常に注目をさせて頂いていた。我国の戸建住宅市場は、人口減少やマンション需要の高まりなどにより、ここ数年閉塞感が漂い始めている。そんな中、我々のコンサルティングテーマにおいても、「フロービジネスとしての住宅メーカーから、ストックビジネスとして住宅サービス業への転換」というものに取組んできた。


具体的には、スクラップ&ビルドの発想に基づいたメーカー的ビジネスモデルから、住宅の販売のみならず、「その後の生活空間作りの提案」や、「長期的なお付き合いに基づく住関連サービスのワンストップ化」といった事が挙げられる。


「無印良品の家」は、生活雑貨小売業という住宅の空間づくりという業態から住宅メーカーへの展開を果たした。まさに逆転の発想であり、今後の住宅業界の成長モデルのヒントとなるのではないかという期待を持って、今回のお話も聞かせて頂いていた。


そこで見えてきたことは、「異業種参入だからこそ見えた視点」と「無印だからこそ出来たモデル」を上手くマッチさせているという事である。 住宅業界の慣習にとらわれることなく、ゼロからそのモデルを見つめなおした事、また無印良品のブランドを様々な面で最大限に活用した事が、現在の「無印良品の家」の成功要因(KFS)であるようにうかがえた。


一方で、当然そこに伴う、試行錯誤の末の苦労や無印ブランドに対する責任など、彼らならではの苦労があったことはいうまでもないであろう。


住宅メーカーがストックビジネスとしての住宅産業を捉えるという視点で、「無印良品の家」から学ぶべき点は多い。


今後とも「無印良品の家」の更なる活躍に、注目していきたい。



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(株)船井総合研究所 経営コンサルタント 久木田光明

船井総研内に発足した不動産ビジネス専門のコンサルタント集団 リアルエステートビジネスチーム(REBチーム)のプロジェクトリーダー。「脱業界常識」をコンセプトに大手から中堅、中小に至るまで多様な企業に対応したコンサルティングを提供。最近は不動産金融分野への進出も始めている。



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