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業界トップインタビュー

対談:毎日コムネット 伊藤守 氏 × 船井総合研究所 久木田光明

ストックビジネスの発想で着実に積み重ねる「堅実成長企業」
不動産会社“らしくない”不動産会社のバックボーンとその事業戦略
株式会社毎日コムネット 代表取締役社長 伊藤 守 氏

久木田: 本日は、市況を取り巻く環境が厳しい不動産業界にあって、08年11月期決算において売上、営業利益、経常利益のいずれも2桁成長を実現しているジャスダック上場、株式会社毎日コムネットの代表取締役社長 伊藤守氏に、事業の立上げから現状の学生特化型のビジネスモデルについてお話をお伺いします。

貴社の創業は旅行業とお聞きしています。現状の御社のビジネスモデルからすると意外な感じが否めないのですが。まずは、創業のころのお話から聞かせてください。

伊藤氏: 大学卒業後サラリーマンやホテルの支配人などを経験した後、毎日ツーリストという旅行代理店を立ち上げたのが、当社のスタートです。
毎日ツーリストでは最初、多くの旅行代理店と同様に職場旅行や格安航空券の取扱いなどの各種サービスを取り扱っておりました。その一つとして学生をターゲットとしたサークル合宿や卒業旅行の手配なども取り扱っていました。

久木田: 創業の旅行業のころから、学生に焦点を当てられていたのですね。
学生旅行の市場はそれほど大きくないと思われるのですが、学生をターゲットとした理由をお聞かせください。

伊藤氏: 学生の合宿ニーズに本格的にターゲットを絞り始めた理由は、旅行代理店業の最大のネックでもあるフロービジネスという点が、ストックビジネスに転換できるという点です。(このストックという概念は当社の全てのビジネスに共通しています)
職場旅行は基本的に毎年行く先が変わってしまうため、旅行会社として特定の場所(宿泊先)を押さえているという優位性が持ちにくい。継続的に利用いただくためにはどれだけ多くの地域でたくさんの宿泊先を抑えているかというバリエーションの豊富さが必要になります。

しかし、学生の合宿は職場旅行と異なり、その場所が気に入れば先輩から後輩へと、継続して利用してもらうことが可能になります。まさにフローではなくストックとして顧客を維持できるわけですね。
この点が大きな理由ですが、他にも学生合宿のほうが職場旅行よりも当時の我々のような中小旅行会社に適していた点があります。
例えば、宿泊先は当時大手が手を出していないような、郊外のペンションやロッジなどであるため、後発企業でも参入が容易であったという点。また通常、職場旅行は年に1回、それも1泊。それなのにあちこち観光したり食事をしたりするため、行程案はいくつも作らされるし伝票も何枚も必要です。
ところが、学生合宿の場合、新歓合宿、夏合宿、春合宿といったように年3回程度開催することが多く、さらには、同じ宿泊施設に6日以上連泊しても伝票は1枚、行程表の作成も添乗員も必要ないということが手間・経費の削減に繋がるという点が挙げられます。

久木田: すでにこの当時からストックビジネスを意識されていたのですね。 また、競合環境を鑑みた結果、戦略的に学生市場を選択されたことも分かりました。
94年に不動産業である株式会社毎日建物を設立されていますが、どういった経緯だったのでしょうか。

伊藤氏: さきほど挙げたような利点があったことから学生合宿をメインの商品として、毎日ツーリストは営業利益で約4億円まで成長することが出来ました。しかし、やはりマーケットの規模を考えると、これ以上の事業の拡大は困難になっていくことが予想されたため、事業の展開を考え始めたのです。

旅行会社の固定費で大きいのは店舗賃料でしたから、当時わが社のオフィスにかかっていた年間約1億円の家賃をヘッジしたいという目的もあって、毎日建物という不動産会社を設立し、当時バブル崩壊の直後で市場に流通していた競売物件を取得することで、賃料収入を確保することを考えたのです。その頃は200室程度を所有し、その客付けは近くの不動産会社に依頼していました。
しかし、その時に、空いている部屋をお客様に利用してもらうという点では、旅行業も不動産業も同じではないかと感じたわけです。つまり、ホテルや旅館の部屋を埋めるのも、マンションの空室を埋めるのも一緒ではないかと。
そこから、サブリース事業がスタートしました。
つまり、所有するのではなく「お部屋に学生を入居させて運営する業務」に徹するということです。
サブリース事業の拡大のポイントは、97年からのエクイティファイナンスの実施だと考えています。
サブリースとはいえ当社のような小さな会社に、10年間も億単位の資産を預けていただくためには当社を信頼していただく必要がありました。そこで、資本政策では、ベンチャーキャピタルなどを入れずに自分たちで、当時の興銀を初めとした大手銀行や生命保険会社の本体と直接交渉をしたのです。
こうして資本を増強することが出来たのに加え、大手銀行や生命保険会社を主要株主としてアピールすることで、オーナー様の信頼を勝ち得ることが出来たのだと思っています。

久木田: まだ上場前でネームバリューや実績の乏しい時期に、自ら積極的に資本政策をおこない、不動産オーナー信用を勝ち取っていかれたのですね。不動産オーナーのマインドを理解した大変効果的な施策だと感じます。

(対談中写真)右:株式会社毎日コムネット 代表取締役社長 伊藤守 氏 左:株式会社船井総合研究所 久木田光明

久木田: それでは、現在の不動産ソリューション事業についてお聞かせ下さい。 学生マーケット特化とはいえ、昨今の少子化の傾向を考えれば、なぜ順調に業績を伸ばすことに成功しているのでしょうか。

伊藤氏: まず、学生賃貸住宅の市場概況ですが、少子化が叫ばれているものの、当社がターゲットとしている大学生は毎年史上最高水準を継続しています。この要因には大学への進学率の上昇や女子学生の増加などが挙げられます。
当社の商圏である首都圏の市場においては115万人の4年制大学生のうち、ターゲットとなる自宅外学生が約50数万人存在しています。ざっくり約10万人が毎年、地方(首都圏外)から上京してくるわけです。
この確実な賃貸需要が当社のメインターゲットとなるわけですが、その規模を約4500億円市場と捉えています。

久木田: 貴社のターゲットである首都圏の大学生市場は順調な推移をしているのですね。
確実な賃貸住宅需要がある地方学生をターゲットしていますが、単にターゲットを絞っただけで入居率100%を達成することは可能なのでしょうか。

伊藤氏: 少子化を背景にした大学受験の変化が、学生特化の当社の強みを生み出していると言えるかもしれません。 昨今大学の定員割れが問題になっており、実に私立大学の40%が定員割れといわれています。そこで大学は学生確保施策として推薦比率を高めているのです。

推薦で大学入学が決まった学生は10月前後から部屋を探し始めますが、10月に通常の不動産会社に行っても、基本的には部屋が空いていません。空いていたとしても、その部屋に確実に入居するためには、大学入学までの期間に無駄な賃料を払う必要があるという問題があります。
それに対し、学生に特化した賃貸マンションを運営している当社では、どの部屋が4月から空室になるのかを把握するため、10月の段階でも学生に部屋を紹介することが出来ます。
また、10月の段階では居住者がいる部屋も気軽に確認してもらえるように、全部屋に対してインターネットの動画で確認できる仕組みを構築しています。さらに部屋を見るだけでなく、最寄り駅から部屋までのルートも確認できるようになっています。
この動画システムはインターネットでどこからでも利用することが出来るため、何度も首都圏に出てくることが難しい地方の大学生の囲い込みに効果を発揮しています。
このように推薦入学の学生に対する囲い込みは10月から始まっているのですが、待ちの営業が基本の一般不動産会社は2月くらいから動き出すので、当社の部屋は4月に100%の入居率を実現できているのだと思います。
学生に特化していることのメリットとして、繁忙期と閑散期が明確なことも挙げられます。学生の部屋探しは、先ほども述べたように10月前後からスタートして、3月中には終わってしまいます。4月からは閑散期に入るため、賃貸スタッフは次のシーズンに向けた業務に時間を割くことが出来ます。そうすることで、当社では毎年1つは新サービスを生み出すことが出来ています。

動画イメージ:全ての物件で、室内・周辺環境(最寄り駅から部屋までのルート等)を確認できる

老朽化し建替えが必要であった大手非金属メーカーの社員寮を学生マンションに建替えた「プレイズ経堂」(毎日コムネット社が運営管理を受託)

久木田: 市場環境を見極めたうえで、地方からの大学生に絞り込むことで、効率的な客付け展開をされている印象を受けます。さらに、戦略的に4月以降は新たな仕掛けのための時間を確保している点が、持続的な成長を可能にしているのですね。社員にしても一年中店舗で賃貸客付けのためのルーチンワークをやり続けるのは、モチベーション低下につながりかねませんしね。ターゲットを絞り込めない不動産仲介会社には出来ない仕組みかもしれません。

久木田: それでは、最後に今後のビジョンについて教えてください。

伊藤氏: 現在、管理戸数は約6000戸ですが、10000戸までは市場の不安等を考えることなく拡大させていこうと思います。さらに、管理戸数の増加に加えて、住居への付帯サービスの開発(インターネットプロバイダーサービスなど)を進めていくことによって、粗利益率の向上(現在26%)を目指します。
また、商圏は首都圏のみをターゲットとし、今後広げる予定はありません。
なぜなら、首都圏は大学生が最も集まってくるエリアであり、賃料も高く設定できるエリアだからです。しかも、まだまだ良質な学生マンションは供給不足だと捉えています。
当社の事業コンセプトは「学生の入り口から出口まで」でして、今後も学生向け賃貸住宅を軸に、サークルの合宿や、就職支援などに取り組んで行きたいと考えています。

久木田: 貴社のビジネスモデルを考えると、短期での爆発的な成長はないものの、一歩ずつ確実に成長することが出来るモデルだと感じました。さらに、賃貸事業を軸として学生に対するあらゆるサービス・商品が、シナジー効果を発揮する可能性が高いという点に御社の今後の成長性を感じることができました。
本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。





経営コンサルタント 久木田光明の視点
左:株式会社毎日コムネット 代表取締役社長 伊藤 守 氏と、左:株式会社船井総合研究所 コンサルタント 久木田光明 とかく固定概念に囚われがちな不動産ビジネス(特に賃貸仲介・管理事業)を、まさに“アイディア”で独自固有のモデルに変革した毎日コムネット。今回それほど多くは語ってはいらっしゃいませんでしたが、おそらく今のモデルにたどり着くまでには様々な試行錯誤や、時には失敗を繰り返しながら、ご苦労を重ねてこられたのだと思います。


やはり優秀な経営者の共通点の1つであるバイタリティ、実行力の豊かさを、短い時間の中ではありましたが、強く感じさせていただいた伊藤社長。ご自身の旅行代理店業の経験を活かし、学生に視点を定め「フロービジネスをストック化する」という発想は、市況の厳しさが一段と増す今、従来のビジネスモデルからの変革が迫られている様々な企業において、大変参考になる視点だと思います。


不況期はやはりストックビジネスが強いため、このような時期にもかかわらず、不動産業種では大変珍しい、前期(08年11月期)業績が昨対で2桁増という素晴らしい結果を実現できたのだと思います。 <事業の立上経緯や、企業規模の大小、経験値や実績に関らず、現状モデルのリスクを回避する思考や、固定概念に囚われない柔軟な姿勢など、ビジネスの基本は“豊なアイディアと実行力である”ということを再確認させられた、今回の対談でした。


毎日コムネットの今後の更なる「おもしろい」モデルの開発を楽しみにしたいと思います。



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(株)船井総合研究所 経営コンサルタント 久木田光明

船井総研内に発足した不動産ビジネス専門のコンサルタント集団 リアルエステートビジネスチーム(REBチーム)のプロジェクトリーダー。「脱業界常識」をコンセプトに大手から中堅、中小に至るまで多様な企業に対応したコンサルティングを提供。最近は不動産金融分野への進出も始めている。



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