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全体最適行動にアメとムチは有効か?
[2009年5月11日]
2009年は歴史的転換点
我々がこれまでのコンサルティングのお仕事の中で、部分最適行動と全体最適行動が一致しない、別の言い方をすれば、「全体最適行動を優先すると、これまで部分最適行動によって得られてきた利益(効用)が減少してしまう」というジレンマを抱えている状態にある企業を数多く見てきました。
個人でも部署でも、全体としては「そうしたほうが良い」と分かっている協力行動(全体最適行動)をとると、その行動を取った当人にとっては、そんな協力行動を取らなかった時よりも、好ましくない結果が生まれてしまう状態です。
例えば、数字による実績評価を実施する組織にとって、企業としては必要であっても、個人・部署にとって1円の実績にもならない業務については消極的な姿勢をとってしまう、他部署との連携の検討や、他部署へ業務を任せれば、会社としての利益が向上する事が明らかにも関らず、そのような行動ができないなど、どこの企業でもよくあるお話だと思います。
もっと大きな視点でこの事例を挙げるとすれば、「タバコのポイ捨て」や、「ゴミの分別」など、多くの社会問題がこのジレンマの罠に陥っているといえるでしょう。
そしてこの解決策として、一般的によく使われる方法が「アメとムチ」システムの導入です。全体最適行動(協力行動)をとった人には報酬(アメ)を、部分最適行動(非協力行動)をとった人には罰(ムチ)を与えます。個人からみた場合、非協力行動から比較すると高くつく協力行動のコストを下げる(効用を上げる)効果があるわけですね。
しかし、この「アメとムチ」システム、本質的な問題解決に役立っているのでしょうか?
【「アメとムチ」システムの導入は新たなジレンマを生む】
まず、このシステムの導入、維持には膨大な手間とコストがかかります。例えば先に挙げた「タバコのポイ捨て」。これも部分最適行動(ゴミ箱に捨てる手間が省ける)と全体最適行動(街がきれいになる)とのジレンマですが、これを解消する為の「アメとムチ」システムを徹底させるためには、24時間365日全ての道路を監視するカメラの導入と、個人を特定する監視社会の構築が必要になります。
つまり「アメとムチ」システムの導入には、システムそのものに大きなコストと手間がかかってしまうのです。そして更には、このコストと手間を一体誰が負担すべきなのかという、別のジレンマを生むことにもつながってしまうのです。
また、一企業レベルの話で、仮にそれらのシステムを維持する費用が、会社が負担できる範囲内であったとしても、次にあげる課題が、「アメとムチ」システムの導入を否定的に考える私の意見に繋がっています。
それは「アメとムチ」の導入は、相手に対する信頼をも毀損する恐れがあるという点です。「あいつが全体最適行動をとったのは、『アメとムチ』システムがあるからだろう。本心では部分最適行動をとりたいはずだよな。きっと』という本心から全体最適行動を取っていたとしても、そうは思えない「疑い」を増幅させる環境を作ってしまうということです。
そもそも全体最適行動が全体的には、また長期的には部分(個人)にとってもお得なことは分かっているのに、そのような行動が取れない理由の1つに、相手に対する信頼の欠如が挙げられます。「俺が全体最適行動をとっても、他の奴が部分最適行動をとって、自分を出し抜くんじゃないだろうか」という思いがその根底にあります。であるとすれば、アメとムチで「虚偽の協力体制」をつくったとしても、本質的な解決には至っておらず、また別の「疑い」を発生させてしまう可能性があるということです。
では、これらを解決する方法あるのか。重要なポイントは「みんながやるであろう」という相手に対する信頼があれば、おそらく多くの人が、自分もそのように行動するということです。逆に「みんなやらないだろう」と思えば、自分も非協力行動、部分最適行動を選択する可能性が高いということです。
「アメとムチ」を使わざるを得ないとしても、全ての人間を強制的に、協力行動、全体最適行動に誘導することは、先ほど挙げたような弊害が生まれるのだとすれば、その範囲を最小にすることが望ましいはずです。つまり「みんながやればやる」という人をある数まで増やす事に、「アメとムチ」を必要最低限活用すればいいのではないでしょうか。
「みんなきっとやるだろう」「みんながやるなら俺もやるよ」という状態に組織をデザインすることが、より重要なことだと思います。
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船井総研内に発足した不動産ビジネス専門のコンサルタント集団 リアルエステートビジネスチーム(REBチーム)のプロジェクトリーダー。「脱業界常識」をコンセプトに大手から中堅、中小に至るまで多様な企業に対応したコンサルティングを提供。最近は不動産金融分野への進出も始めている。
















