対談:セコムホームライフ 小林清一郎 氏 × 船井総研 吉崎誠二
| 吉崎: | 本日はセコムグループのマンションデベロッパーであるセコムホームライフ株式会社の代表取締役社長 小林 清一郎氏に、現在の取り組みや今後の展望をお聞きかせいただきたいと思います。また、セキュリティー業界のリーディングカンパニーであるセコム(株)が親会社にあたることから、これまでのマンションデベロッパー業界にはあまり浸透していない、“ストック型ビジネス”についてもお聞かせください。 |
| 小林氏: | まず、私はセキュリティー業界から来た人間ですが、このマンション開発業界は、ストックという発想やその備えが乏しい業界だというのが正直な思いです。 私がこの業界に来たとき、最初に驚いた点は「マンション開発業界の営業の担当は、部屋の鍵を渡すと急激にお客様から離れていく」ことでした。 このことを疑問に思い、同業他社の先輩にお聞きしたところ、「マンション開発業界はクレーム産業なので、購入していただいたお客様に関わり続けると、クレームの対応をしなくてはならない。そうすると営業担当は、次の営業活動に支障をきたしてしまうため、お客様から離れていくのだ」と言われました。 しかし、私がもといた業界もまさにクレーム産業であり、そこは契約していただいたお客様にその期間中どうしたら満足してもらえるかに注力をしていたことを考えると、先輩の回答にも納得はできませんでした。 そこで、セキュリティー業界とマンション開発業界で何が違うのかを考えたところ、クレームの対応の仕方、その仕組みに大きな違いがあることが分かりました。セキュリティー業界ではクレームを会社が対応しているため、営業担当者の負担が少なくなっているのです。 私の考えとしては、クレームとは営業個人が受けるものではなく、会社で受けるものだと思います。クレームの解決に営業が奔走すると、確かに次の営業に支障が出てしまいますので、会社が組織としてその解決に当るべきなのです。 また、何千万円ものマンションを購入していただくには、お客様からの信用をいただかなくては不可能なことですので、物件を購入していただいたお客様と営業担当の間には信用が必ず生まれています。 この信用は営業担当者と会社にとって大変な財産です。なぜなら、その財産を大切にしていけば、次の仕事に繋がる可能性があるからです。クレームに対応したくないからと、この繋がりを捨ててしまうことは大きな損失だと思っています。 以上のようなことから、当社ではお客様サービスセンターである“ホームライフコールセンター”がクレームの窓口になるような仕組みを構築しています。 |
| 吉崎: | ホームライフコールセンターで一括してクレームを受けることで、お客様との繋がりを保ちつつ、営業担当者の負担を軽減する仕組みを会社として確立したのですね。では、実際の営業担当者はどのような考えでお客様の対応をしているのでしょうか。 |
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| 小林氏: | 当社のマンションの営業担当者には「お客様とは永い付き合いをするように心がける」ということを常に伝えています。
この“永い付き合い”とは、購入していただいたマンションに永住していただくことだけを指すものではありません。 ご存知の通り、当社が手がけているような都市型のマンションには、そのマンションに永住する方よりも、ライフステージに合わせて移り変わっていく方の方が多いのが現実です。 そこで、当社としては自社ブランドであるグローリオシリーズの中で流動していただくことで、お客様と永い付き合いをしていこうと考えているのです。 これがマンションデベロップメント事業の中におけるストックビジネスの考え方だと思っています。 |
| 吉崎: | 実際の営業担当者もやはりストックビジネスの考えをお持ちだということがよく分かりました。 次は御社の開発事業についてお聞かせください。 現在、マンション業界は大変厳しい状況ですが、今後御社の開発事業展開はどのようにお考えでしょうか。 |
| 小林氏: |
現在の市況を乗り越えるためには、一回「ゼロベース」に戻って考える勇気が必要だと考えています。
現在開発している物件は、2~3年以上前に土地を購入しています。しかし、その仕入れた土地は、この市況により現在の価値が当時よりも大幅に下落しています。 土地の価値の下落に伴いマンションの相場が下落していることを考えると、土地を仕入れた当時の計画のまま、開発をしてしまうことは大変なリスクを抱えているといえます。 このような市況であるにもかかわらず、もとの事業計画を強行に押し進めてしまうことは、経営者として一番選択してはいけないことだと思っています。つまり、全ての事業計画について、もう一度ゼロベースで採算性などを考え直さなくてはならないのです。その結果、採算が合わないような事業は辞める勇気も必要だと考えます。 また、今後景気は回復していきますが、回復したとしても景気が下落する前に「戻る」のではないと考えています。今回の不況は、マンションに限らずモノに対する評価額を下げたと捉えています。 |
| 吉崎: | ということは、今後売り出していくマンションは何らかの特徴を持たせていくということでしょうか。 |
| 小林氏: | そうですね。以前から言われていることではありますが、価格での差別化は一段と難しい時代に突入することから、サービスでの差別化がより重要になってくると考えています。 当社では、このサービスでの差別化の一つとして、“グローリオ・サポート24”というサービスを居住者にご提供しています。 |
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| このサービスは入居後の住居に関するトラブル全てに、フリーコール1本で24時間365日対応するもので、セコムグループ企業との連携によって、損害保険・健康相談・旅行・カーライフなど日常生活で発生する要望に幅広く対応しています。 |
| 吉崎: | そのサービスは、御社が分譲したマンションでは共通のサービスですよね。現在分譲中である「グローリオ蘆花公園」はそれ以外に特徴的なサービスを提供しているのでしょうか。 |
| 小林氏: | グローリオ蘆花公園には、“グローリオ・サポート24”と“ゲーテッドタウン構想※”で安心と安全を確保しているのに加えて、入居された方々の健康や心のケアまで守ることをコンセプトとした“健康サポート”を提供し、広い意味での“安心ゲーテッドタウン”を目指しました。 (ゲーテッドタウン構想※:敷地全体をフェンスで囲み、出入り口を限定。セコム・セキュリティに加え、3重4重のセキュリティーガードを設けている) 具体的にはセコムの提携病院である久我山病院との提携による健康サポートを提供しております。健康診断(初回費用は無料)や割引で利用できる人間ドック、医師や看護師による健康相談・健康指導などを居住者の皆様にご提供する予定です。当マンションに住まわれる方は、全員掛かり付けのお医者さんを持つことが出来るといったイメージの実現を目指しています。 当社としては、ご入居時にこの健康診断等を受けていただくことで、居住者のカルテができで、それによって久我山病院との連携で居住者の方の健康を守ることが出来ると考えています。また、「寝室環境システム」を導入したゲストルームや、マッサージチェアを配置したプライベートラウンジを設けることで、居住者へ健康や癒しを提供する構想も組み込んでいます。 |


| 他に、現在検討しているサービスには、「生活支援サービス」があります。お歳を召した方などに対して、部屋の掃除をするなどのお手伝いさんの派遣等を考えています。このようなサービスを提供し、居住者の方の安心・安全・満足を追求することで、「5年後の喜び、10年後の満足」を持っていただけるようなマンションを目指しています。 |
| 吉崎: | ここまで、御社の管理体制や居住者へのサービスについてお伺いしてきましたが、今後サービスを強化していく中で、リフォームなどの専有部のサービスについてはどのようにお考えでしょうか。 |
| 小林氏: | 個人的には、提供するサービスの範囲を共有部と専有部とに分けていることには、大きな矛盾を感じています。共用部と専有部は密接に関わっているので、本来なら分けられないと思うのですが、現状では法的な障害や居住者の意識の問題があり、すぐに当社が専有部のサービスに取り組むことは簡単ではありません。 しかし、お客様の意識を変えることは、親会社であるセコムが実行してきたことですので、私たちも挑戦する価値はあるかも知れません。また、専有部のサービスを行うためには、マンションの構造もスケルトン&インフィルのように変えていくことが有効だとも思います。 現状としては、お客様の専有部に対するニーズに対応できるようなサービス網を持つことは必要であり、そこから取り組んでいくことが現実的であると考えております。 |
| 吉崎: | 従来のマンション開発業界にはない、ストックビジネスへの取り組みをしている御社ならば、マンションにおけるワンストップサービスの実現可能性を感じることが出来ました。 本日は貴重なお話、ありがとうございました。 |
数年前まで、私のオハコの講演テーマは“脱業界発想の経営”というものだった。業界内に蔓延る既存の枠にとらわれた概念から抜け出せないと、過当競争が進む時代に成長は難しいと訴えてきた。

1997年 12月船井綜合研究所入社。戦略プロジェクト本部 次長。電鉄会社・大手不動産会社・ハウスメーカー・マンション関連企業など、住宅メーカー・不動産関連業を中心に、大手企業からベンチャー企業まで幅広く、数多くの顧問先を持つ。船井総合研究所の総合不動産コンサルチーム(REBチーム)の統括責任者として、数多くのメディアに取り上げられ、年間の講演数も60回を超える。不動産・住宅・建設・建築ビジネスはもちろん、不動産ファイナンス、不動産ソリューシ ョン等の専門コンサルタント12人を擁するREBチームの統括プロデューサー。