対談:セコムホームライフ 小林清一郎 氏 × 船井総研 吉崎誠二
セコムホームライフの取り組みと今後の展望
吉崎: 本日はセコムグループのマンションデベロッパーであるセコムホームライフ株式会社の代表取締役社長 小林 清一郎氏に、現在の取り組みや今後の展望をお聞きかせいただきたいと思います。また、セキュリティー業界のリーディングカンパニーであるセコム(株)が親会社にあたることから、これまでのマンションデベロッパー業界にはあまり浸透していない、“ストック型ビジネス”についてもお聞かせください。
小林氏: まず、私はセキュリティー業界から来た人間ですが、このマンション開発業界は、ストックという発想やその備えが乏しい業界だというのが正直な思いです。
このことを疑問に思い、同業他社の先輩にお聞きしたところ、「マンション開発業界はクレーム産業なので、購入していただいたお客様に関わり続けると、クレームの対応をしなくてはならない。そうすると営業担当は、次の営業活動に支障をきたしてしまうため、お客様から離れていくのだ」と言われました。
この信用は営業担当者と会社にとって大変な財産です。なぜなら、その財産を大切にしていけば、次の仕事に繋がる可能性があるからです。クレームに対応したくないからと、この繋がりを捨ててしまうことは大きな損失だと思っています。
吉崎: ホームライフコールセンターで一括してクレームを受けることで、お客様との繋がりを保ちつつ、営業担当者の負担を軽減する仕組みを会社として確立したのですね。では、実際の営業担当者はどのような考えでお客様の対応をしているのでしょうか。
小林氏: 当社のマンションの営業担当者には「お客様とは永い付き合いをするように心がける」ということを常に伝えています。 この“永い付き合い”とは、購入していただいたマンションに永住していただくことだけを指すものではありません。
吉崎: 実際の営業担当者もやはりストックビジネスの考えをお持ちだということがよく分かりました。
次は御社の開発事業についてお聞かせください。
現在、マンション業界は大変厳しい状況ですが、今後御社の開発事業展開はどのようにお考えでしょうか。
小林氏: 現在の市況を乗り越えるためには、一回「ゼロベース」に戻って考える勇気が必要だと考えています。 現在開発している物件は、2~3年以上前に土地を購入しています。しかし、その仕入れた土地は、この市況により現在の価値が当時よりも大幅に下落しています。
吉崎: ということは、今後売り出していくマンションは何らかの特徴を持たせていくということでしょうか。
小林氏: そうですね。以前から言われていることではありますが、価格での差別化は一段と難しい時代に突入することから、サービスでの差別化がより重要になってくると考えています。
吉崎: そのサービスは、御社が分譲したマンションでは共通のサービスですよね。現在分譲中である「グローリオ蘆花公園」はそれ以外に特徴的なサービスを提供しているのでしょうか。
小林氏: グローリオ蘆花公園には、“グローリオ・サポート24”と“ゲーテッドタウン構想※”で安心と安全を確保しているのに加えて、入居された方々の健康や心のケアまで守ることをコンセプトとした“健康サポート”を提供し、広い意味での“安心ゲーテッドタウン”を目指しました。


他に、現在検討しているサービスには、「生活支援サービス」があります。お歳を召した方などに対して、部屋の掃除をするなどのお手伝いさんの派遣等を考えています。このようなサービスを提供し、居住者の方の安心・安全・満足を追求することで、「5年後の喜び、10年後の満足」を持っていただけるようなマンションを目指しています。
吉崎: ここまで、御社の管理体制や居住者へのサービスについてお伺いしてきましたが、今後サービスを強化していく中で、リフォームなどの専有部のサービスについてはどのようにお考えでしょうか。
小林氏: 個人的には、提供するサービスの範囲を共有部と専有部とに分けていることには、大きな矛盾を感じています。共用部と専有部は密接に関わっているので、本来なら分けられないと思うのですが、現状では法的な障害や居住者の意識の問題があり、すぐに当社が専有部のサービスに取り組むことは簡単ではありません。
吉崎: 従来のマンション開発業界にはない、ストックビジネスへの取り組みをしている御社ならば、マンションにおけるワンストップサービスの実現可能性を感じることが出来ました。
数年前まで、私のオハコの講演テーマは“脱業界発想の経営”というものだった。業界内に蔓延る既存の枠にとらわれた概念から抜け出せないと、過当競争が進む時代に成長は難しいと訴えてきた。
このテーマの講演会は毎回好評を頂いていたが、果たしてそれを実行に移した企業がどれくらいあったのだろうか。同じ業界に長く居ればいるほど、既成概念が積み上げられていく。そこから抜け出さねばいけない事をわかっていながら中々それは難しいことなのだ。
今回対談させていただいた、小林社長には数年前私が主催する講演会にゲスト講師としてお招きした。講演の内容は100名近い参加者から大好評だった。私の講演の順番が僭越ながら小林社長の後だったこともあり、社長の講演開始前の数十分間控え室で色々お話をさせて頂いた。その時の会話がとても新鮮で楽しかった事を記憶している。とても明るく、微笑を絶やさない会話は周囲にいる人々を明るくする。大きな企業を率いる方は違うな、と感じた。今回の対談もで私を含めそこにいた人たちは、ずっと笑顔だった。
セキュリティー会社から参入し、今では業界の中でも地位を確立したセコムホームライフは、まさに業界発想にとらわれない会社だ。
今後の益々の発展が期待できる。

1997年 12月船井総合研究所入社。戦略プロジェクト本部 次長。
電鉄会社・大手ディベロッパー・ハウスメーカー・マンション関連企業、など、不動産関連業・住宅関連業を中心にコンサルティングを行う。
調査・分析から、経営戦略立案、商品開発、営業戦略構築 等これまで様々な業務の全体責任者として業務に携わる。
2006年~ 沖縄大学 人文学部 非常勤講師。

















