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業界トップインタビュー

対談:さくら事務所 長嶋修 氏 × 船井総研 吉崎誠二

住宅・不動産業界から世の中を変えていく
~その手段としての既存住宅流通活性化の手法とは~

本日は、ホームインスペクションや個人向け不動産コンサルティングを展開されている株式会社さくら事務所 代表取締役社長 長嶋修氏に今後のホームインスペクションの展開をお聞きすると共に、弊社 上席コンサルタント 吉崎誠二と不動産業界の今後について対談していただきます。

さくら事務所設立までの経緯

吉崎: まずは、さくら事務所設立までの経緯と、社長ご自身のこれまでの経歴などをお話いただけますでしょうか。

さくら事務所 代表取締役社長 長嶋 修氏

長嶋氏: さくら事務所は設立11年ですが、私自身は総合不動産会社のポラスグループに26歳で中途入社し、そこで不動産業界に出会いました。 前職は広告業界でしたので、不動産業界に来たときにその未整備な状況に大変驚きました。一方で、不動産業界は何も整備されてない業界ですから、ここでやっていくのはそれほど難しくはないのではないかという印象がありました。

ポラスグループでは不動産売買仲介に配属されたのち、様々な部署を回ったのですが、その中で、日本での不動産業界の成り立ちがどうなっているのか、これからどうなっていくべきなのかを勉強しました。そこで勉強したことで、現状の課題などを再認識することが出来ました。 特に売買仲介業界のビジネスモデルでは、物件を仲介し「3%+6万円」という手数料を一律で頂くということに疑問を持ち、他のモデルを模索するに至りました。
そこから“初回面談でいくら、案内したらいくら、結果的に仲介できたら満額を頂く”というように段階的に手数料を頂くモデルを社内ベンチャーとして企画を提出したのですが、その企画は会社には受け入れられませんでした。
このモデルが社内では実現出来ないということで独立し、「宅建業には携わらない」「中立的な第三者」「不動産業界のセカンドオピニオン」というイメージの個人向け不動産コンサルティング事業をスタートしました。
しかし、もともと独立するつもりは全くなく、流れというか勢いで独立してしまいましたので、最初の3年くらいは全くうまくいかなかったですね。 1年目の売上は70万くらい、2年目は120万、3年目は1500万、4年目に5000万となり、その後ようやく順調に伸びていきました。

さくら事務所ではホームインスペクションを進めていきたい

長嶋氏: さくら事務所に関して、今は人を増やしていないので、売上は頭打ち、微増程度です。現状の体制(14名)は、私なりに考える適正規模に落ち着いていると言えます。
きめの細かいコンサルティングサービスを提供するには、社内の人間がおおよそ何をしているのか分かる範囲でないと難しいので、多くても20人くらいまでだと考えています。

現在、当社の事業には2つの柱があり、一つは個人向けの相談業務という不動産コンサルティング、もう一つは住宅の診断というホームインスペクションです。
前者の個人向け不動産コンサルティング業務に関しては、最終的にはなくなってしまってもよいと考えています。不動産売買仲介業の世界がいろんな意味で整備されてくれば、それは不動産売買仲介のビジネスの中で行えばよいのだと考えているからです。

不動産業界はいい意味での淘汰と再構築が進むのではないか

吉崎: 産業のライフサイクルという観点で見ると、不動産売買仲介業界は非常に進化の遅いビジネスだと言われており、業界に古い体質が残っているとも言えます。

一方で、賃貸管理や戸建分譲を展開している会社などはセミナーに積極的に参加するなど勉強熱心なところが多いという実感を持っています。
長嶋社長は、不動産業界の成り立ちなどからその課題を確認されたと仰っていましたが、売買仲介業界に対してどのような認識をお持ちでしょうか。

長嶋氏: 勉強しないという点については、売買仲介業界に限らず、不動産業界全体がしていないという印象です。

この業界は本来、非常に高いリテラシーや誇りがないとやっていけないというような、大変責任の重い仕事なはずですが、仕組みは整っておらず、従事している方々もそれでいいと思っている方が多いように感じます。
しかし、政権交代が起こったように時代も変わっていきますので、世の中の変化に合わせて不動産業界でもこれまでの常識が、半分くらい崩壊してしまうのではないかと考えています。
ここ2~3年で、いい意味で淘汰と再構築の様なものが起こると思います。

既存住宅流通活性化のための具体的提案とは

吉崎: 民主党の政策集の中に両手禁止を始め、ホームインスペクションのことも出ていますが、国土交通の政策において他に解決しなければならない問題が山積みされており、それらが優先されている印象がありますね。

長嶋氏: 両手禁止については、それ自体の実施よりも不動産流通の仕組みを整え、既存住宅の流通を円滑にしていくということが重要です。やり方によっては、既存住宅の流通量はいくらでも増加させることは出来ると考えています。

そのために、まず対策を講じなくてはならないことは、「物件の囲い込み」です。これは実際に企業単位でも個人単位でも横行しており、TOP営業マンは物件情報を外には出さないというのは暗黙の了解です。まず、この囲い込みに関しての罰則を強化することでもいいのではないでしょうか。
あるいは、専任媒介をなくして全て一般媒介にすることもよいかも知れません。

吉崎: 国交省が既存住宅流通の活性化を推し進めており、近年流通量が増加していますが、増えた理由は新築価格の高騰であったり、希望エリアに物件が出ないなどの理由が多いようですね。

長嶋氏: 国土交通行政において、住宅に関しては2002年くらいから、かなり良い方向に向かっていると私は考えています。
新築に関する整備は長期優良住宅制度が整いましたし、既存住宅と賃貸の活性化を推し進めていく政権に交代したことも良い兆候だと思っています。

ただ、既存住宅流通の活性化には、それ単体の対策だけでは不十分で、新築や賃貸も併せて改革していく必要があります。 この3つをバランスよく整備していくことで本当に既存住宅流通が活性化すると考えています。

売買仲介のビジネスモデルは1つである必要はない

吉崎: 長嶋社長はホームインスペクションをセットにした不動産売買仲介を展開されているハウスハウス株式会社などの役員も兼任されていますよね。

長嶋氏: ハウスハウスは、仲介手数料無料・値引きとホームインスペクションが付いているということが特徴ですが、これはあくまで不動産売買仲介の一つの形だと思っています。

対談中の長嶋氏(左)と吉崎(右)

 私はもう一つ、新横浜にある株式会社しあわせな家という会社に関わっているのですが、“中古注文住宅”というモデルを展開しています。この会社の特徴は“お客様との打合せ初期段階では建物の話しかしない”というものです。どんな風な家に住みたいかというイメージを土台として、それを実現するための中古マンションや戸建を紹介する仲介の形態を取っています。

おかげさまで反響は上々で、実質営業は一人なのですが月3~5件くらいの案件を頂いています。

吉崎: 不動産業界にはそういった顧客目線に立ったサービスが少ないということを考えると、その目線に立つことで顧客の支持を集めやすいという、シンプルなお話ですよね。

長嶋氏: 従来の宅建業のあり方を、一度なかったこととして考えると色んな形が考えられるので、面白い形を世の中に出したい、という気持ちです。

吉崎: 絶対的な形ではなく、色んな形でよいという考え方は非常に面白いですね。
私も数多くの企業様のコンサルティングをさせていただきましたが、このような発想は言葉で聞いたことがあまりありませんね。大体、あるビジネスモデルに絶対の自信を持っていることが多いです。

公認インスペクター制度の現状と今後の展開

吉崎: それでは次に、公認ホームインスペクターの資格や試験について、現状と今後の展望をお聞かせください。

長嶋氏: NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を立ち上げまして、現在は100名弱の公認ホームインスペクターが登録しています。将来的には数千~1万人くらいのホームインスペクターがこの協会に登録されるということを考えています。

協会では、技術情報の提供や案件の提供など、個人のホームインスペクターをサポートすることをメインとしています。将来的には蓄積した診断情報を工務店などに提供して、より耐久性の高い住宅を建てていただくことに役立てていきたいとも考えています。
ホームインスペクターの資格は、現在なんらかの建築士資格を保有して、現場のことを分かっている方にとって、プラスαになるようなイメージをしています。

吉崎: 11月14日に第1回目の試験が実施されるようですが、どんな職種の方が受験されているのでしょうか。

長嶋氏: 基本的には独立された建築士事務所の方が多いですね。他は不動産、工務店、リフォーム会社など、満遍なく申し込まれています。
工務店やリフォーム会社の社長が会社の社員に受けさせて、営業の道具にしたい、スキルアップに役立てたいということで、10名単位での申し込みもありました。

今回は受験資格を設けていないのですが、来年からは受験資格を何らかの建築士という形にする方向で検討を進めています。
今後の展望としては、ホームインスペクションの報告書が、宅建業法の取引現場できちんとした形で説明されないといけないので、解説技能者という資格のようなものも設立したいと考えています。

住宅・不動産業界は効果的な社会貢献を実現できる業界である

吉崎: 協会の立上げなど長嶋社長のお話をお聞きすると、ビジネスというよりも社会貢献という志向が強いように感じられますね。

長嶋氏: 利益を求めるビジネスと社会貢献のCSRが分離しているのがこれまでの常識でしたが、これからはその2つが一致してくると思っています。自分たちのビジネス(業)がそのまま社会貢献になるような形が理想ですね。
世の中をよくする動きや働きをしている企業が、経済的にも繁栄するという方向に向かうのでないでしょうか。

実は、自分は不動産にべったりでもないと思っています。不動産や住宅が世の中をよくするための手段として効果的なものだと考えこの業界にいるのですが、それを実現する土台としての業界は、極端に申し上げればどこでもいいと思っています。
しかし、その有効性を住宅・不動産業界の方は感じていないことが、もったいないと思いますね。こんなにも重要で、影響力がある業界にいるのに本人たちに自覚がない。むしろ、厳しい業界と思っているような誤解があるので、それを解いていきたいと思います。
そのために今私がやっていることは、業界団体、カスタマーであるお客様、国(政治)など、いろんなところに顔を出して、色々と意見を言わせてもらっているといったことです。

吉崎: おっしゃるとおり、住宅・不動産業界が変わると、景気もだいぶ変わってくると思いますね。

最近の不動産業界の動向として、弊社にコンサルティングの依頼や問い合わせが増えてきていることから、景気は徐々にではありますが回復基調にあると感じています。

不動産業界の活性化には“金融との連動”と“中小企業の底上げ”が不可欠

吉崎: 個人的に、住宅・不動産業界の活性化には、住宅ローンの債権周辺の整備がされる必要があるのではないかと考えています。
住宅・不動産業界と金融業界が接近してきているので、その部分は無視できないはずです。

長嶋氏: そうですね。
業界内の整備をするのはもちろんですが、最終的には金融との連動を整備しないことには話になりませんよね。
住宅の健康診断と、それをどのように評価するのかという金融との整合性をとることが必要です。この辺に関しては、まだまだこれからでしょうね。

吉崎: ホームインスペクションなど御社の取り組みを見たときに、住宅ローン債権証券化の発展に大きく寄与すると感じました。
この部分はこれからの住宅ローンの根幹になってくるのではないかと思いますね。

長嶋氏: 住宅・不動産業界の発展には、中小の宅建業者や工務店が頑張らないといけないのかなと思っています。しかし、彼らは情報収集能力やノウハウが足りないことが多く、そういう部分を教育していくことには大きな意義があると思います。

株式会社さくら事務所 代表取締役社長 長嶋修氏と、右:株式会社船井総合研究所 上席コンサルタント 吉崎光明

吉崎: 確かに、売上を見ると小さな町の不動産会社の売上を積み上げるとかなりの割合を占めますよね。ということは、そこが変わらないと業界全体は変わっていかないということになるのでしょう。

我々も業界の応援団という形で後方支援をしていきたいと思っていますので、長嶋社長とも何らかの形でコラボレーションなどが出来ればと思います。

吉崎: 本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。





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(株)船井総合研究所 吉崎誠二

1997年 12月船井総合研究所入社。戦略プロジェクト本部 次長。
電鉄会社・大手ディベロッパー・ハウスメーカー・マンション関連企業、など、不動産関連業・住宅関連業を中心にコンサルティングを行う。
調査・分析から、経営戦略立案、商品開発、営業戦略構築 等これまで様々な業務の全体責任者として業務に携わる。
2006年~ 沖縄大学 人文学部 非常勤講師。



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