対談:さくら事務所 長嶋修 氏 × 船井総研 吉崎誠二
~その手段としての既存住宅流通活性化の手法とは~
本日は、ホームインスペクションや個人向け不動産コンサルティングを展開されている株式会社さくら事務所 代表取締役社長 長嶋修氏に今後のホームインスペクションの展開をお聞きすると共に、弊社 上席コンサルタント 吉崎誠二と不動産業界の今後について対談していただきます。
吉崎: まずは、さくら事務所設立までの経緯と、社長ご自身のこれまでの経歴などをお話いただけますでしょうか。
長嶋氏: さくら事務所は設立11年ですが、私自身は総合不動産会社のポラスグループに26歳で中途入社し、そこで不動産業界に出会いました。 前職は広告業界でしたので、不動産業界に来たときにその未整備な状況に大変驚きました。一方で、不動産業界は何も整備されてない業界ですから、ここでやっていくのはそれほど難しくはないのではないかという印象がありました。
長嶋氏: さくら事務所に関して、今は人を増やしていないので、売上は頭打ち、微増程度です。現状の体制(14名)は、私なりに考える適正規模に落ち着いていると言えます。
きめの細かいコンサルティングサービスを提供するには、社内の人間がおおよそ何をしているのか分かる範囲でないと難しいので、多くても20人くらいまでだと考えています。
吉崎: 産業のライフサイクルという観点で見ると、不動産売買仲介業界は非常に進化の遅いビジネスだと言われており、業界に古い体質が残っているとも言えます。
長嶋氏: 勉強しないという点については、売買仲介業界に限らず、不動産業界全体がしていないという印象です。
ここ2~3年で、いい意味で淘汰と再構築の様なものが起こると思います。
吉崎: 民主党の政策集の中に両手禁止を始め、ホームインスペクションのことも出ていますが、国土交通の政策において他に解決しなければならない問題が山積みされており、それらが優先されている印象がありますね。
長嶋氏: 両手禁止については、それ自体の実施よりも不動産流通の仕組みを整え、既存住宅の流通を円滑にしていくということが重要です。やり方によっては、既存住宅の流通量はいくらでも増加させることは出来ると考えています。
あるいは、専任媒介をなくして全て一般媒介にすることもよいかも知れません。
吉崎: 国交省が既存住宅流通の活性化を推し進めており、近年流通量が増加していますが、増えた理由は新築価格の高騰であったり、希望エリアに物件が出ないなどの理由が多いようですね。
長嶋氏: 国土交通行政において、住宅に関しては2002年くらいから、かなり良い方向に向かっていると私は考えています。
新築に関する整備は長期優良住宅制度が整いましたし、既存住宅と賃貸の活性化を推し進めていく政権に交代したことも良い兆候だと思っています。
吉崎: 長嶋社長はホームインスペクションをセットにした不動産売買仲介を展開されているハウスハウス株式会社などの役員も兼任されていますよね。
長嶋氏: ハウスハウスは、仲介手数料無料・値引きとホームインスペクションが付いているということが特徴ですが、これはあくまで不動産売買仲介の一つの形だと思っています。
私はもう一つ、新横浜にある株式会社しあわせな家という会社に関わっているのですが、“中古注文住宅”というモデルを展開しています。この会社の特徴は“お客様との打合せ初期段階では建物の話しかしない”というものです。どんな風な家に住みたいかというイメージを土台として、それを実現するための中古マンションや戸建を紹介する仲介の形態を取っています。
吉崎: 不動産業界にはそういった顧客目線に立ったサービスが少ないということを考えると、その目線に立つことで顧客の支持を集めやすいという、シンプルなお話ですよね。
長嶋氏: 従来の宅建業のあり方を、一度なかったこととして考えると色んな形が考えられるので、面白い形を世の中に出したい、という気持ちです。
吉崎: 絶対的な形ではなく、色んな形でよいという考え方は非常に面白いですね。
私も数多くの企業様のコンサルティングをさせていただきましたが、このような発想は言葉で聞いたことがあまりありませんね。大体、あるビジネスモデルに絶対の自信を持っていることが多いです。
吉崎: それでは次に、公認ホームインスペクターの資格や試験について、現状と今後の展望をお聞かせください。
長嶋氏: NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を立ち上げまして、現在は100名弱の公認ホームインスペクターが登録しています。将来的には数千~1万人くらいのホームインスペクターがこの協会に登録されるということを考えています。
吉崎: 11月14日に第1回目の試験が実施されるようですが、どんな職種の方が受験されているのでしょうか。
長嶋氏: 基本的には独立された建築士事務所の方が多いですね。他は不動産、工務店、リフォーム会社など、満遍なく申し込まれています。
工務店やリフォーム会社の社長が会社の社員に受けさせて、営業の道具にしたい、スキルアップに役立てたいということで、10名単位での申し込みもありました。
吉崎: 協会の立上げなど長嶋社長のお話をお聞きすると、ビジネスというよりも社会貢献という志向が強いように感じられますね。
長嶋氏: 利益を求めるビジネスと社会貢献のCSRが分離しているのがこれまでの常識でしたが、これからはその2つが一致してくると思っています。自分たちのビジネス(業)がそのまま社会貢献になるような形が理想ですね。
世の中をよくする動きや働きをしている企業が、経済的にも繁栄するという方向に向かうのでないでしょうか。
吉崎: おっしゃるとおり、住宅・不動産業界が変わると、景気もだいぶ変わってくると思いますね。
吉崎: 個人的に、住宅・不動産業界の活性化には、住宅ローンの債権周辺の整備がされる必要があるのではないかと考えています。
住宅・不動産業界と金融業界が接近してきているので、その部分は無視できないはずです。
長嶋氏: そうですね。
業界内の整備をするのはもちろんですが、最終的には金融との連動を整備しないことには話になりませんよね。
住宅の健康診断と、それをどのように評価するのかという金融との整合性をとることが必要です。この辺に関しては、まだまだこれからでしょうね。
吉崎: ホームインスペクションなど御社の取り組みを見たときに、住宅ローン債権証券化の発展に大きく寄与すると感じました。
この部分はこれからの住宅ローンの根幹になってくるのではないかと思いますね。
長嶋氏: 住宅・不動産業界の発展には、中小の宅建業者や工務店が頑張らないといけないのかなと思っています。しかし、彼らは情報収集能力やノウハウが足りないことが多く、そういう部分を教育していくことには大きな意義があると思います。
吉崎: 確かに、売上を見ると小さな町の不動産会社の売上を積み上げるとかなりの割合を占めますよね。ということは、そこが変わらないと業界全体は変わっていかないということになるのでしょう。
吉崎: 本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。

1997年 12月船井総合研究所入社。戦略プロジェクト本部 次長。
電鉄会社・大手ディベロッパー・ハウスメーカー・マンション関連企業、など、不動産関連業・住宅関連業を中心にコンサルティングを行う。
調査・分析から、経営戦略立案、商品開発、営業戦略構築 等これまで様々な業務の全体責任者として業務に携わる。
2006年~ 沖縄大学 人文学部 非常勤講師。
















