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適正な不動産価格とは~不動産の鑑定価格の意義と実際取引価格との差について~
[2010年7月19日週刊ビル経営第677号掲載]
不動産の価格形成メカニズムについては、一般的な市場メカニズムが働きにくいといわれている。本来、物の価格というものは合理的な市場メカニズムに基づいた需要と供給のバランスによって形成される市場価値と同義であるはずである。
ただし、一般的に不動産市場は、株式市場や為替市場等と比較すると、1.個別性が高い、2.流動性が低い(頻繁にとりひきされるわけではない)という理由により、「効率的な市場」とはいい難い。つまり、合理的な市場メカニズムによって、全てのファンダメンタルズを反映した合理的な価格が形成されない可能性が高いといえるのである。
その一方、約2,300兆円といわれる我が国の不動産の資産規模の大きさを踏まえると、適正な不動産価格の決定は、不動産が投機的取引の対象となることを防止する役割のみならず、社会全体に与える影響が大きく、社会的公共的意義が極めて大きい行為だといえるであろう。よって、不動産鑑定士がその役割を担っている、鑑定評価やその結果としての価格の提示には、高度な知識と豊富な経験及び的確な判断力を持ち、更に、これが有機的かつ総合的に発揮できる練達堪能な専門家によってなされる必要性があり、それは同時に不動産鑑定士の責務を規定するものであるとも言える。
見方をかえると、不動産鑑定士や不動産鑑定という役割が存在しなかった場合、社会における一連の価格秩序の中でも、特にその規模や周りに与える影響度が大きいにも拘らず、「効率的な市場」が存在しない環境であるため、不動産が投機的取引の対象となり不必要な価格の変動をもたらし、結果、社会に対して悪影響をもたらす可能性が十分に考えられるといえるのではないだろうか。
とはいうものの、鑑定価格(正常価格)と実際の取引価格との間に差異が生じているという事実は否めない。これは正常価格を算出する際の買い手と売り手の前提条件が、経済学の理論を形成する前提条件と同様に、極めて合理的で、かつ情報取得の差異といったものがない理想的な市場を想定していることに起因すると考えられる。即ち、経済学の分野においても、行動経済学の発展や情報の非対称性に関する理解(そこから発生する「レモン市場」の問題)等、その前提条件に対する現実の社会や経済との乖離について、注目されている。不動産の正常価格と実際の取引価格との間に差が生じる理由は、これらと同じといえよう。
では経済学のルールと同様に、不動産鑑定による正常価格は全く意味をなさないものかというとそうではない。即ち、鑑定士が算出する正常価格の意義とは、経済学における基本ルールが存在するように、また株式市場や為替市場の動向を示すインデックスが存在するように、一定の方向性や枠組み、投機的取引を防止するセーフティネットのような役割を担っているといえるのではないだろうか。
また、実際の不動産取引が、基本的には当事者間の合意によって価格が決定される為、そこでは、それぞれの効用最大化、即ち、当事者それぞれの取引時における効用最大化のマッチングによって価格が決定されているといえる。その意味において、不動産の正常価格の意義は、お互いの効用最大化のマッチングを進める中での1つの基準や方向性を見ること、即ち、ある一定の基準値を前提に合意形成を図る事で、その取引がスムーズかつ合理的に進むという社会的効用を与えることができるといえよう。
不動産価格の決定メカニズム及び、不動産鑑定による正常価格の意義については、その必要性を含めて、考え方については意見が分かれるところではあるが、少なくとも、「非効率な市場」である不動産市場においては、必要不可欠な議論であるといえよう
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船井総研内に発足した不動産ビジネス専門のコンサルタント集団 リアルエステートビジネスチーム(REBチーム)のプロジェクトリーダー。「脱業界常識」をコンセプトに大手から中堅、中小に至るまで多様な企業に対応したコンサルティングを提供。最近は不動産金融分野への進出も始めている。
















