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CRE戦略の重要性と現状の課題~CREは経営戦略に従う~
ここ数年、CREという言葉が不動産業界の中でも浸透しつつある。CREとはCorporate Real Estate の略であり、「企業不動産」と訳される。CREとは企業が保有、賃借する全ての不動産を指し、CRE戦略とはそれら企業に関わる全ての不動産を企業価値向上の観点から、不動産投資の効率性を最大限向上させるという考え方、戦略であると言える。
よってCRE戦略の立案・展開については、経営戦略の観点から不動産を捉える必要があり、経営戦略とCRE戦略の一貫性があってこそ初めて、その意味をなすと思われる。しかしながら、実際、企業側の実態を見ると、その必要性や有用性への理解不足もさることながら、現状、経営戦略とは隔離されたCREの実態、また、CREの経営課題における優先順位の低さなどから、CRE戦略への取組みがその企業にとって重要かつ緊急性を要する課題という認識を持つ企業は未だ少ないようである。
その要因の1つとして、具体的な「経営戦略(戦略オプション)とCRE戦略の最適な組合せ及びその判断基準(メルクマール)、効果検証が存在しない」という点が考えられる。即ち、経営戦略とCRE戦略の相関関係がいまひとつ不透明であるという問題認識である。
例えば、企業が経営戦略を構築する際には、その企業を取り巻く外部環境(機会と脅威)や企業自身のミッションやビジョン、ライフサイクル上における現状のポジションなどが考慮されることは言うまでもない。であるならば、経営戦略との一貫性を目指すCRE戦略もまた、企業の成長ステージ、取り巻く環境、目指すべきミッションといった諸要素に対応して、各不動産の最適な活用手法も異なるものと考えられる。
成長期にある企業は一般的に資金需要が高いことが想定される。その場合、不動産の活用手法も資金調達力の観点からの選択を検討することが有益である可能性が高い。逆に成熟期にある企業の、非コア事業に関する不動産については、完全なるコストカットの目的から、売却やセール&リースバックといった出口に対する検討可能性が求められるであろう。
同様に、数年後に上場を目指す成長意欲の高いビジョンを描く企業と、ビジョンが現状維持、規模より質を追求し続ける企業との違いもまた、対象となるCREによって、その出口は大きく異なると思われる。
有効活用手段の選択における判断基準についても、対象企業の置かれている状況やアセットの種類、活用状況等により様々であり、一概に収益還元法から導き出される収益価値、または投資採算性といった定量的価値基準のみでは判断できない部分も多い。
例えば、キャッシュフローを向上させるCRE戦略の導入が、「経営の安定性につながる」と市場や投資家から評価された場合には、キャッシュフローを割り引く際の資本コスト等も下がるであろう。これら両者の相乗効果によって、事業価値の計算式上、企業価値は向上することになる。また、適正な不動産活用により、現状では稀なケースではあるが、時価純資産が株式時価総額よりも高くなるような企業も多数現れることも考えられる。こうなると、まさに敵対的買収防衛策の一環としてCRE戦略を捉えることも可能と言える。
このように、企業価値を最大化させる不動産の有効活用というCRE戦略を、収益還元法に代表されるような、不動産の収益価値からみた定量的判断のみならず、より企業経営からの視点、もしくは経営戦略論からのアプローチにより、経営戦略とCRE戦略の相関、手法選択時の判断基準、実施後の効果などについて、一定のルール化や実証による効果検証が必要であると考えられる。
以上のように、概念上は一定の理解が深まりつつあるCREやCRE戦略という言葉もまた、本質的な「企業価値への影響度」を踏まえた上では、実務的にはまだまだ乗り越えなければならない課題も多いといえよう。米国の歴史学者、アルフレッド・D・チャンドラーが「組織は戦略に従う」という言葉を残したように、まさに「CREは戦略に従う」ものであり、それを実現する為には不動産価値評価以上に、自社の戦略を明確にさせた上で、その戦略とCREとの関連性について、「視える化」させる必要があると言えるであろう。
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