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2009年03月22日

全体最適行動に「アメとムチ」は有効か?

私がこれまでのコンサルティングのお仕事の中で

部分最適行動と全体最適行動が一致しない

別の言い方をすれば、全体最適行動を優先すると、

これまで部分最適行動によって得られてきた利益(効用)が減少してしまう

というジレンマを抱えている状態にある企業を多く見てきました。


個人でも部署でも、全体としては「そうしたほうが良い」と分かっている

協力行動をとると、その行動を取った当人にとっては、そんな協力行動を

取らなかった時よりも、好ましくない結果が生まれてしまう状態です。

例えば、数字による実績評価を実施する組織にとって、

企業としては必要であっても、個人・部署にとって一円の実績にもならない

業務については消極的であったり、

明らかに他部署との連携や、他部署に業務を投げれば会社としての

利益が向上するが明らかなのにも関らず、そのような行動ができない

など、どこの企業でもよくあることだと思います。

そしてこの解決策として、一般的によく使われる方法が

「アメとムチ」システムの導入

です。

全体最適行動(協力行動)をとった人には報酬(アメ)を、

部分最適行動(非協力行動)をとった人には罰(ムチ)を与えます。

個人からみた場合、非協力行動から比較すると高くつく協力行動のコストを

下げる(効用を上げる)効果があるわけですね。

しかし、この「アメとムチ」システム、本質的な問題解決に役立っている

のでしょうか?

まず、このシステムの導入、維持には膨大な手間とコストがかかります。

「タバコのポイ捨て」なども広い意味での

部分最適行動(ゴミ箱に捨てる手間が省ける)と

全体最適行動(街がきれいになる)

とのジレンマですが、これを解消する為の「アメとムチ」システムを徹底

するためには、24時間365日全ての道路を監視するカメラの導入と

個人を特定する監視社会の構築が必要になってきます。

仮に、そこまで大きな話ではなく、一企業レベルで、しかもそのコストを負担

できる仕組みであったとしても、次の課題が、「アメとムチ」システムの導入

を否定的に考える私の意見に繋がっていきます。

「アメとムチ」の導入は、

相手に対する信頼をも毀損する恐れがあるという点です。

つまりこういうことです。

「あいつが全体最適行動をとったのは、『アメとムチ』システムがあるからだろ。

本心では部分最適行動をとりたいはずだよな。きっと』

本心から全体最適行動を取っていたとしても、

そうは思えない環境を作ってしまうということです。

そもそも全体最適行動が全体的には、また長期的には部分(個人)にとっても

お得なことは分かっているのに、そのような行動が取れない理由の1つに

相手に対する信頼の欠如が挙げられます。

「俺が全体最適行動をとっても、他の奴が部分最適行動をとって、自分を

出し抜くんじゃないだろうか」っていう思いがその根底にあります。

であるとすれば、アメとムチで「虚偽の協力体制」をつくったとしても、

本質的な解決には至っておらず、また別の「疑い」を発生してしまう可能性

があるということです。

アメとムチの使い方には十分に注意しましょう。


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