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2011年08月29日

パフォーマンスの評価とは

カテゴリー:経営戦略

企業の業績を評価する際には、実はいくつかの見方があります。

「業績がいい会社」「パフォーマンスがいい会社」

といっても、その定義は様々です。

例えば、誰にとって「パフォーマンスがいい会社」なのでしょう。

経営者?従業員?株主?社会?

これによっても大きく異なります。

では全てのステークホルダーズの評価の源泉たる「売上」が高ければ、

それで「パフォーマンス」がよいと定義できるのでしょうか?

収益性や流動性、安全性などの評価も見なければなりません。

ただ、このような単純会計的なアプローチでも、「パフォーマンス」

を評価するには、十分だとはいいきれません。

その理由の1つを挙げれば、例えば会計上の数値は、ある程度、

経営幹部の自由裁量が聞くからです。

売上の計上方法、在庫価値評価(LIFO or FIFO)、減価償却率、

償却方法など、いくつかのファクターについては、一定の経営上の

意向や選好を反映させることができます。

また、会計上の利益は、どうしても短期利益重視のバイアスが

かかります。

例えば長期的視野にたった複数年度にまたがる投資は、

その投資が直接収益を生み出さない年においても、コストとして

賦課されます。

もちろん会計上の評価には、ブランドや組織の強みといったような

「無形資産」の価値は計上できないという弱点も挙げられます。

そういう意味では、あらゆる単純な会計上の評価も、

それで企業の業績、パフォーマンスの全てを評価するのは難しい

ということがわかります。

とはいうものの数字でその企業のパフォーマンスを評価しなければ

ならない、それしか見えないというのも現実なので、

できるだけ、総合的に会社のパフォーマンスを評価できるものに

近づけようということで、これらの単純な会計的なアプローチが

修整されたいくつかの指標が存在します。

それが

ROIC(投下資本収益率)

であり、

EVA(経済付加価値)

であり、

MVA(市場付加価値)

などです。

それぞれの詳細の説明は、また別の機会に譲りたいと思いますが、

これらの指標は(特にROIC)は単純な会計上の科目を分解して

組合せ直さなければならない(つまり修正)ので、手間としては

とても面倒なのですが、ロジックとしてこの考え方に基づいて

数字を追っていくと、単純な財務諸表では見えてこなかった事実や

その会社のパフォーマンスの現状になどについて、理解が深まる

ケースが多いのです。

逆に言えば、企業のトップマネジメントとして、目標値(パフォーマンス)をいくらに

置くか以上に、目標の視点をどこに置くかの方が、重要であると

思っています。

なぜなら目標に置く視点で、その会社の経営に関する姿勢や、

パフォーマンスに対する姿勢が明確になるからです。

あなたの会社のパフォーマンスを評価する指標は何に置かれますか?


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2011年08月25日

マーケティングや営業は心理学?

カテゴリー:コラム風(その他)

様々な営業スキルやマーケティング施策の正当性を語る上で、

その根源的な部分には、必ず人が贖うことのできない

「心理的な影響からの支配」に、その根拠を求める事があります。

人は「希少性」に弱い

だからマーケティング施策の「期間限定」とか

「数量限定」は有効だ

とか

人は「権威」に弱い

だから「権威者」の声を利用するなど、

心理学的なアプローチから、営業やマーケティングの施策の有効性が

理解されることも非常に多いと言えます。

今日も某企業で、心理学的なアプローチから営業の根源的な

部分をルール化するという研修をやらせて頂いたのですが、

やっぱり面白いです。

どれだけ、経営戦略や競争戦略のフレームワークを用いようとも

また、その大元となっているマクロ経済学やミクロ経済学の理論を

用いたとしても、結局、人間が行動や意思決定を行う際には、

そこまで完全に合理的ではない。

むしろその合理性以上に、心理的な影響による判断が大きいという事が

あらためて確認できました。

近年、古典的な経済学モデルを否定(または修正)する形で、

古くはゲーム理論、行動ファイナンス、直近ではニューロエコノミクスのような

人の行動特性(または相手の動きをみた判断)や心理的な影響を鑑みた

経済モデルや経営モデルを語る学問が注目されてつつあります。

今日感じたのは、古典的なフレームワークや理論は使えものにならなくて、

心理学的アプローチモデル等のほうがベターだ!ということではなく、

心理学的アプローチや行動ファイナンス、ゲーム理論を理解すればするほど、

やはり伝統的なモデルの理解と、その両方が必要だなぁということです。

すなわち、その比較によって、分かること、得られる所が大きいという事です。

結局、経済や経営に関する勉強はとても幅広く、様々な分野を勉強しなければ

ならないなとあらためて感じたわけです。

今のところ、私自身は、その知的好奇心はまだあるようなので、

なくなってしまうまでに、しっかり勉強していきたいと思います。


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2011年08月22日

営業力の価値評価

カテゴリー:競争戦略

どんな商売でも「何かを売る」という行為が発生しなければ

売上は成りたちません。

「営業力のある会社」は、どんな商品を売っても、どんな新規事業に

参入してもある程度の数字を獲得することができるでしょう。

それほど、この「営業力」というものの価値は、企業を経営していく上で

大変重要なものとなります。

もちろん、「営業力」がそれほどなくても売れるような「商品力」や

「マーケティング力」が重要であるという考え方もあります。


しかし、あらゆる事業に必要不可欠でかつ普遍的な機能という意味で

「営業力」の価値を捉えれば、本来、「商品力」や「マーケティング力」よりも

高く評価されて然るべきファクターだと思います。

しかし、この営業力という価値はなかなか定量化しにくい。

当然、バランスシートには載らない無形資産です。

また、そのあらゆる業界、顧客、企業などに対応できる

絶対的なルールというものを視える化・標準化することも

容易ではありません。

なお、ここで言っているのは、本屋にあるような

「営業力を高めるスキル」を指しているのではありません。

このような営業スキル向上の「手法」の話をすれば、

それこそキリがないほど挙げられるでしょう。

またそれらの手法を出来るだけ早く全員に共有する為の

「ナレッジ・マネジメント」の仕組みや、営業マンのモチベーションを

維持させる「評価制度やインセンティブの付与」といった仕組みなども、

それらに該当するでしょう。

ただ、「価値評価」という観点で「営業力」捉える際には、業種や市場属性、

顧客対象といった諸条件によって大きく変化するものではなく、もっと言えば

それらの条件による違いをも内包し得るより「普遍的」なものに価値を

見出すべきでしょう。

となると、結局、常に営業力を高められている根本にあるような要因、

その企業の営業に対する考え方とか文化とか、先輩と後輩の関係性とか

社長のタイプとか・・・

そういったものが根源的な価値として挙げられるといえます。

そうであるとすれば、逆に「営業力」の価値の高さが示される結果になります。

つまりこういうことです。

営業力の高いA社の、営業力が高い根源的な理由が営業スキル的なものや

教育マニュアル、営業ツールといったものであるとすれば、当然、競合他社は

それらの真似しようと試みるはずです。

お気づきのとおり、これらの差別化ファクターは比較的模倣がしやすい、

模倣コストが低いものです。

それらが「営業力」を高くさせている根源的価値だとすれば、その価値は模倣され

やすいため、それほど大きな価値を見出す事は難しいと言えるでしょう。

逆に先にあげた「企業文化」や「社長の思い」「長年のその会社の営業に根付く

歴史・コンテクスト」だとすれば、これらは極めて模倣するのが難しい。

仮にこれらの価値をM&Aで買うとすれば、それ相当の価値がついて然るべきです。

このように「営業力」の価値とは、持続的な競争優位の源泉として

最もシンプルでわかりやすいファクターの1つです。

「営業力」そのものが他社との差別化要素に挙げられるという企業は、

実はそれだけでも結構価値が高いという事になります。

なぜなら、他社は中々真似ができないからです。

本当の「営業力の強化」にはそれぐらいの価値がある重要な

テーマという事になります。


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2011年08月20日

円高はいつまで続くか

カテゴリー:経済ニュース

昨日(19日)のニューヨーク外国為替市場で、

円相場が一時1ドル=75円95銭まで急騰し、

東日本大震災直後の3月17日につけた

戦後最高値(76円25銭)を約5カ月ぶりに更新しました。

この流れは予想どおり。

問題は、どこまでドル安円高が進むのか、どうしたら80円台に

戻るのかということ。

為替レートの決定メカニズムはいくつかあります。

昨日、Facebookで少し「友達」と議論になったのですが、

為替レートの決定メカニズムの中で最も感覚的にも分かりやすいのは

「購買力平価説」ってやつです。

中でもビックマック指数などが有名ですが、要は世界中で売られている

マクドナルドのビックマックの価格を比較することで、今の為替レートを

理論づけるというものです。

米国ではビックマック1つは4.07ドル。日本では320円。

購買力平価に従うと、1ドル80円ぐらいの計算になります。

しかし、その「友達」の見解では、

日本のマクドナルドではハンバーガーの単品価格を落として

客を引き寄せて、結果的にはセット購入させてサイドオーダー品で

利益を取る戦略をとっているので、ハンバーガーの単品価格は

他国よりも2割くらい安く設定されているはずだと。

つまり実質は80×0.8=64円くらい。

実際に米国で買い物や食事をした実感でも1$=60円くらいのイメージが

あるとおっしゃっていました。

一方で、変動相場制の元、貿易のみならず、資本の国際間移動が自由になった今、

購買力平価だけで為替レートを説明するには若干、無理があるというのが

現在の国際金融の主たる考え方のようです。

有名なのは、マコービッツさんが唱えたアセットアプローチ。

つまり為替レートは国際間での資産選択を通して決定される資産価格の一種で、

異なる通貨建ての資産の期待収益が等しくなるように決定される

と考える理論がだそうです。

通貨もまた、流動性をもって価値の変動性を持つ以上、実は国債や株、その他の

債券と同様、アセット(資産)の1つであると捉えます。

資産と捉えれば、他の資産と同様、

リスクフリーレート(国債の金利)+期待レートの変化率

がその通貨の期待収益率となります。

で、その期待収益率は、異なる通貨で比較した場合、

その2つの通貨の期待収益率が等しくなったところで

安定するということになります。

例えば、ドル金融資産の期待収益率が円金融資産の期待収益率よりも高い場合、

ドル金融資産に投資することになります。

すなわち、円を売ってドルを購入する動きが起こり、為替レートは、

ドル高円安に推移するというわけです。

この動きは期待収益率が等しくなるところまで止まるというわけです。

で、結局これはベースとなる国債の金利、ドル円相場であれば、

日米間の金利差で期待為替レートの変化率が決まるということになります。

この理論によれば、今の円高の根源的背景は、米国もゼロ金利政策を実施したせいで

日米金利差が縮まってきた事が大きな要因とみる事ができます。

その上、米国が大量にドルを刷っているので、更に追い打ちがかかります。

じゃー日本もどんどんお金をすればいいじゃん!となりますが、そう簡単な話でも

ありません。

日本にはバブル以降、バランスシート調整で企業のデレバレッジ(レバレッジを

効かせない=銀行から借金しない、返済する一方)が続いているために、

日銀をお金を刷ってベースマネーを増やして、マネーサプライを増やしても、

企業にお金が流れない。

で、結局たっぷり生まれたお金は国債を買うしかないという状況が

長らく続いています。

お金を刷ることに対しては日銀はインフレ懸念を含めて、かなり気をつかって

いるようですが、この「本来のお金の流れ」がうまく循環しない現在の構造にも

頭を悩ましているのではないかと思います。

要はバブル崩壊の傷からまだ完全に立ち直り切れていないということです。

ということで、少なくとも今のような米国の金融緩和が続く間は、

ドル安円高の圧力が常に増すものであると言わざるを得ないでしょう。

そういう意味では日銀の単独為替介入もあまり意味をなさないということになります。

次のポイントは、ジャクソンホールでのFRB議長、バーナンキさんの講演。

どうこたえるか?QE3をちらつかせるか?

26日、日本時間の23時から。大注目です。



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2011年08月18日

Google、モトローラ買収の背景

カテゴリー:経済ニュース

Googleが、今年はじめ旧モトローラが二分割されて出来た、

モバイル部門のほう、モトローラ・モビリティを買収すると発表。

買収金額は125億ドル。

これは、発表時12日時点でのモトローラ社の終値に63%もの

プレミアムを上乗せした一株あたり40ドルの計算になります。

大変な驚きと共に、この発表を聞いて多くの人が、直感的に

「GoogleもApple化するのか?」

と思った方も多いはず。

つまり、モバイルにおいてはアップル型のハードウェア&ソフトウェア

統合ソリューションの形の方が、PCのような汎用ソフトウェアとハードウェア

プロバイダとを分離して考えるモデルより優位性が高いという事を

暗に認めたことになるのではないか?と。

そうなると、Googleの現状を考慮すれば、

逆に不安な事の方が多いように感じます。

まず、スマートフォン市場のハードウェア販売は競争が厳しすぎる。

そのうえGoogleのコア・コンピテンシーと比較してもあまりに

ハードウェアの製造・販売は畑違いではないか。

では、今のモトローラにこれらに関する他社を圧倒する目覚ましい

ソリューションがあるかというと、そうでもない。

しかも、現在世界的なスマートフォンのOSシェアでは

トップのGoogleのAndroid。

現状のAndroidを沢山つかってくれているHTCやSamsungといったメーカー

などとも競合になるわけだし、個人的には、

「んん?グーグルさん、そこは広げないほうがよいんじゃない?

しかも、そんな高額なお金を払ってまで」

と思ったわけです。

しかし、その後、彼らのプレスリリースや報道の詳細をみていると

本当の買収の目的(少なくとも建前上の目的)は少し、毛色が異なる

ようでした。

そこにあるのは

「Androidエコシステム(Androidを取り巻く環境全般)

を防衛するための特許戦争への対応」

ということです。

Android OSは、周知のとおり、あらゆるハードウェアメーカーが

無料で利用できるオープンソースソフトウェアです。

これはAppleの閉鎖的な「iOS」やライセンシーにソフトウェア使用料を請求する

Microsoftに対抗する戦略といえます。

結果、スマートフォンOS市場ではトップシェアにのぼり出たAndroid。

しかし、この戦略に対し競合、特にAppleとMicrosoftは黙っていません。

すなわち、彼らの持つ特許を侵害していると、この2社が結託して、

特許訴訟攻撃をおこない始めました。

競合他社にしてみれば、なんとか携帯メーカー各社がAndroid OS

を使う際のコストを引き上げたい。

この「無料で使える」というAndroidの最大の強みを崩したい

ということです。

Googleの発表をみていると今回の買収は、これらの動きに対抗するために

自社の特許ポートフォリオを強化するということに、その最大の理由が

あったと主張しているようです。

モトローラ社は現在の携帯市場においても創業80年を超える

老舗企業の1つ。

彼らが保有する特許は17000以上。

出願中の特許も約7500と言われてます。

これらを自らのものにすることで、AppleやMicrosoftの攻撃を防衛しよう

というのが本当の狙いだという事です。

このように、今回の買収金額をGoogle事業の根幹の1つになった

「Android エコシステム」を守るための費用とみれば、決して高くはないという

判断なのかとも思えてきます。

ちなみに、今年の6月30日には、破綻したカナダのNortel Networksの特許群

6000件を、特許競売としては史上最高の45億ドルという値で、

AppleやMicrosoft、Research In Motion(RIM)を含む入札者で

構成されるコンソーシアムが競り落としました。

この競売に当初から名乗りを挙げていたGoogleは負けたのです。

しかし、それから1カ月も経たないうちにGoogleは

米IBMから1000件以上の特許を購入していたことが報じられました。

このようにみると、今モバイルOSの競争は

この「特許戦争」に集約されつつあるとみる事ができます。

各社とも、この部分を強化せざるを得ないということ。

今回のモトローラ買収の背景も、このような一般消費者からは見えにくい

熾烈な競合間競争がその背景にあったものと思われます。


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2011年08月16日

競争戦略のコアファクターは非合理!?

カテゴリー:競争戦略

先日取り上げた競争戦略を改めて深化させると。

これまでも様々な場面で何度も述べてきたように、私は

企業が求めるあるべき姿は、「持続的成長力のある企業」であり、

その為には「持続的な競争優位性」を1つでも持たなくてはならないと

思っています。

お気づきのとおりこの「持続的」という部分が最も重要かつ

難しい部分になります。

短期的に一発逆転的な競争優位性の獲得は、

そういう意味では「ひらめき」や「思いつき」また、

一部で成功しているモデルがあるけれども、それがまだ過少な場合、

「模倣」をすることで、まだ模倣をしていない企業との差を確立する

という手法などでも十分に対応することが可能です。

しかし、「持続的な」競争優位となるとそう簡単なものでもありません。

例えば、同業他社なら皆誰しもが納得し賛同する合理的な手段や

方法、モデルによって作られた競争優位性は、それはそれで素晴らしい

ものでもあるだろうし、一時的な競争優位性の確立には確かな効果を

生み出すことは可能なのですが、ではそれが他社がマネできない

持続的競争優位の源泉になるかというと、それはまた別の話です。

例えば、規模の経済性効果を最大限に活かすために、大規模な

生産設備を購入し、生産性を向上させた。

これは、この大規模な生産設備を持っていない企業や、

持とうと思ったとしても資金的な障壁を理由に購入できない企業との

比較でみれば、少なくとも現時点では競争優位性を確立することが

できるはずです。

良い設備を導入すれば生産性が向上し、コストが削減でき、

価格面での競争優位が確立できる。

誰もが納得できる合理的な競争優位の源泉といえるでしょう。


ただしです。

このような競争優位のファクターは、その設備を購入することで、もしくは

その設備によって生まれる生産性の向上という効果を、別の方法で

実現できる手段(代替手段)を獲得できれば、

その優位性はすぐに無くなってしまうわけです。

そこで必要なものは、相手が模倣できない競争優位の源泉であり、

それは時に周りから見れば、非合理的に見えるべきものであると、

「ストーリーとしての競争戦略」の著者、一橋大学院の楠木健先生は

おっしゃっています。

この「一見して非合理」は、持続的競争優位の源泉においては

大変重要なファクターです。

競合からしてみれば模倣する「動機がなく」、もっといえば

競合は「意識的に模倣を忌避する」ことに繋がるからと、楠木氏は

おっしゃっています。

いわば、「賢者の盲点」であり、一見すると「そんなことは有り得ない」

「やるべきでない」と思われるようなモデルや発想が

非常に重要であるということになります。

同書では、「スターバックス」や「ガリバーインターナショナル」

「サウスウエスト航空」、「マブチモーター」他などが、なぜ

持続的競争優位を築けたのか?その源泉にあった

「一見して非合理」と思われる重要な「クリティカル・コア」は

なんであったのか?をわかりやすく、紐解いてくれています。

ちなみに、楠木氏は、来週8月24日、25日に開催される

弊社主催の第85回経営戦略セミナー

ゲスト講師の1人としてご登壇頂く予定になっています。

私も時間が合えばぜひ聞きに行きたいと思っています。



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2011年08月15日

日本化する米国

カテゴリー:経済ニュース

本日は、終戦記念日。

戦後66年が経つ今年、東日本大震災、そして

原子力の驚異にさらされた我が国においては特別な意味を持つ

終戦記念日となりました。

しかし、まもなくリーマンショックから3年が経とうする今、

世界経済にとっても、とりわけ経済の世界でも屈強と

言われて続けてきた米国経済にとっても、

1つの歴史的な転換点に立たされているような気がします。


世界の留まるところを知らない経済成長欲求の中で

生まれた過剰なマネーは、既に成熟化しつつ先進諸国の

あるあらゆる市場にはその十分な受け皿は存在せず、

結果的にマネーゲームの中で生まれたサブプライムローンなどの

金融商品がそれらのマネーを吸収する役割を担ってきました。

それらの破綻が世界の経済システムに様々な大きな傷跡を残し、

その傷による実質的な死や致命傷への悪化を「防止する」という形で

各国が矢継ぎ早にかつてない規模での財政出動、金融緩和を

実施したわけです。

その「後遺症」として、今の欧州危機問題、米国債権問題などを捉える

とわかりやすいような気がします。

今日から遡ること9日前から、世界の市場は、さらに新たな局面を

迎えつつあります。

米国債の格付けが格下げされ、NYダウは日毎に300円をゆうに超える

値動きで乱高下しました。

それに伴い、為替はドル安が更に進み、ドル円相場では、まもなく

戦後の円の最高値を更新しようとする勢いです。

これらの動きを受けてFRBは、ゼロ金利政策を少なくとも2013年半ばまで

継続すると発表しました。

今、マーケットでは、米国の日本化(ジャパナイゼーション)が始まっていると

見る人が多いと聞きます。

例えば、格下げ後のゼロ金利政策の長期化というストーリーは、

1998年にトリプルAの格付けを失い、その後、10年近くゼロ金利政策を続けた

日本と大変似通っていると言われています。

それは同時に、1990年の不動産バブル崩壊後の日本のように、

米国も景気が長期にわたって低迷する「失われた10年」に突入する寸前

なのではないか、という見方を指します。

未だに世界の経済のドライバーである事にはかわりない米国。

そして基軸通貨国である米国。

米国経済の行く末は、世界にとっても、中でも特に日本にとっては、

大変に大きな影響を受ける問題です。

今回のサブプライムローン問題、リーマンショックの影響が相対的には

低かったと言われている日本。

本来であれば、この時期にこそ世界の経済を牽引する役割を担う

べき存在であるはずなのですが、うちわの御家騒動、すなわち政治問題、

財政問題等で、周りの心配をしている暇がないというのが今の現状。

あらためて、世界に目を向けなければと思う、今日の終戦記念日でした。



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2011年08月12日

国債問題の根源的背景

カテゴリー:経済ニュース

今日は、私の敬愛する先生、現役バリバリのアナリストかつ

エコノミストの方と会食する機会を頂きました。

今の国債問題、ソブリンリスクに対する話題で持ちきりでしたが、

これらの根源的な原因はどこにあるのかという話。

それは同時に日本国債はまだ大丈夫なのかという問いかけにも結果的に

答える事になる観点でもあります。

今のマーケットの見方としてはやはり、

「経常収支」が黒字か赤字かが重要なポイントだという事でした。

国債金融の世界では

よく出てくる「ISバランス」の恒等式に関わる問題です。

ISバランスとは

経常収支=国民民間余剰+財政余剰

すなわち、

経常収支=国内資金余剰

という見方をさします。

国民民間余剰とは要は、民間の貯蓄と消費の差額

財政余剰とは言うまでもなく政府の収入と支出の差額です。

今、問題になっているギリシャ、スペイン、イタリア、そして米国も

経常収支が赤字の国です。

日本は基本的に経常収支は黒字の国家です。

財政余剰は完全に赤字なのですが、

それを上回る国内民間余剰の黒字、

そう、貯蓄率の高さが効いてるわけです。

米国は、かなり前から、財政収支も経常収支もずっと

赤字だったんですが、そこはやはり基軸通貨国という信認があって

これまでは問題なくやってこれたんですが、リーマンショック以降の

急激な財政支出によって、その信認を弱めてしまうほどの

財政赤字が膨らんだ。

で、流石に、このままでは、ということで格下げをされてしまった

というのが、先日の歴史的な事件の背景です。

欧州において危機にさらさている国々は、はたしてこの経常収支を

黒字に転換できるビジョンや可能性をもっているのか。

それが見えない国々については国債に対する信用不安がおこり、

長期金利が上昇するという現象がおこっているということでしょう。

では、日本は?

経常収支が安定的に黒字が続く間は大丈夫という見方ができます。

しかしながら、ISバランスでみる経常収支の黒字の要因は

繰り返しにになりますが、民間の貯蓄率の高さに依存しているわけです。

しかしながら、今後、日本の高齢化の進展を考慮すると、

これまでのような貯蓄率は期待できない。

実際、足元の貯蓄率は減少傾向にあるという話もありまます。

なかなかに、難しい国債問題。

意外に身近に感じる事の少ない国債問題ですが、

国債の問題は金利の問題そのものですし、

金利は経済の体温計といわれるほど、重要なファクター。

やはり注目せざるを得ないと思います。

今日も、大変勉強になりました。

先生、ありがとうございました。


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2011年08月11日

垂直統合戦略の今

カテゴリー:経営戦略

垂直統合戦略とは

ポーターさんがつくったバリューチェーンや、

一般的なサプライチェーンの中で今いるポジションから上流、または

下流に事業ドメインを広げる戦略の事を指します。

メーカーが卸事業も兼ねたり、小売りが製造にも参入したりと、

例を挙げれば枚挙に暇がありません。

この垂直統合戦略は、以前に比べると、その存在感が弱くなっていると

思われます。


以前であれば、バリューチェーンやサプライチェーンの全行程を

1社または1つのグループで全方位的に網羅することが、規模の経済や

範囲の経済の観点から、有利であると言われてきました。

現に、これまでの日米の力ある著名なメーカーを思い浮かべると、

「大きいことは良いことだ」と言わんばかりに、この垂直統合戦略を

M&A戦略とも連動しながら、積極的に活用してきたと言えます。

さて、では今はどうなのか。

AppleやMicrosoft HPを例に挙げるまでもなく、大きなトレンドとしては、

自社あるいは自社グループで全てを内製化する流れよりも、

自社は得意、または利益率の高い事業、機能に特化し、その他は

外に投げる手法が主流となりつつあるように感じています。

ファブレスカンパニー、OEMという言葉がこれほど、広がったのも

そんな現状を物語っているのかもしれません。

そもそも自社で複数の活動(機能)を内製化させる垂直統合戦略の

必要性はどこに求められるのでしょう。

それは「機会主義的行動に対する脅威と統治コスト」の関係にあります。

機会主義の脅威とは、まぁ簡単にいえば取引の際に相手をだましたり

ごまかしたりする脅威の事をさします。

どんな取引にも一定の機会主義の脅威は発生していて、

様々な手法を用いてそれらを統治しているわけです。

契約書なんてのもその1つです。

で、この取引の統治コストを最少化しつつ、機会主義の脅威を

最少化する手法が「垂直統合」である場合は、それを選択せよ

というのが、1つの見方です。

(垂直統合を選択すべきとする理由は、他にもありますが)

この取引費用の経済学からのアプローチから垂直統合の

有用性を見た場合、例えば現在のAppleやMicrosoftの

非垂直統合的戦略はどう説明できるのでしょうか。

大きい点は、やはりこちら側が圧倒的に力を持っているということでしょう。

機会主義の脅威は、相手が機会主義的な行為に及んだ際に

得られる利益と、失う損失との差額が大きければ大きいほど

高まります。

つまり、評判などを含めて失う損失が高いとわかっている場合には、

相手も機会主義的な行為は避けようとするはずです。

つまり、機会主義的行動の心配をする必要がないので、外部に

アウトソーシングしてもよいという見方です。


日本の今の大企業やグループ系企業を見ていると、過去の戦略の中で

垂直統合的な戦略を選択したがゆえに、今となってはそれほど大きなメリット

もないにもかかわらず、結果的にその体制が続いているケースが多いように

感じます。

なんとなく、「事業間のシナジーが効いて範囲の経済性効果が効くから」

とか、「上流から下流までの事業の網羅性が強みとなる」といったイメージで

垂直統合が正当化されるケースが多いのですが、実は、アウトソースした方が、

あるいは、自社の得意で独自な機能に特化した方が、収益性が向上するという

ケースもあるはずなのです。

そのあたりを定量的にチェックしなければならない企業は、まだまだ沢山ある

ように思います。



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2011年08月10日

なぜ全体最適より部分最適が優先されるのか part2

カテゴリー:マネジメント

前回、組織の運営を効率的に行なうために、

機能的につくったヒエラルキーやセグメントが、

いつの間に組織にとって、効率どころか非効率の原因に

なってしまっているという問題。

ここには「囚人のジレンマ」に代表されるような「ゲームの理論」に

関する問題が根付いているというお話をしました。

その解消方法の1つが前回触れた、そのゲームの枠組みを決めている

「ルール」を、組織における報酬や懲罰制度等で変えてしまうというものです。

しかしこれでは、根本的な解決にはならないということも最後に触れました。

あらためて協調・裏切りゲームの根本的な原因を考えると、

相手に対する信頼の欠如です。

「相手が自分を裏切るかもしれない」

という思いが、このゲームを成り立たせている理由になるのです。

「囚人のジレンマ」の構造は、東西冷戦問題を説明するのによく使われますが、

要するに2つの主体が対立的な関係になっていることが前提に、

語られるものです。

では、1つの企業や組織で、そもそもAチーム、Bチームは対立する

関係なのでしょうか。

まずはここを確認する必要があります。

根本的には、同じ会社であるはずなので、多少の僻みややっかみはあるにせよ

そこまで大きな対立を前提に考えるべきものではないはずなのです。

ここで、経営理念やビジョン、ミッションといったものの重要性が問われてきます。

同じ理念や思いを共有していれば、それほど組織同士が対立することもないし、

相手に対する信頼も持てる。

相手に対する信頼があれば、最も合理的な選択肢は互いに「協調行動」を取るという

選択になるはずです。

また、同一組織内でこの問題を考える上で重要な視点はこの両社の関係や

ゲームは連続的に続くということです。

すなわち「繰り返し型の囚人のジレンマ」というやつです。

一度きりの協調・裏切り問題と、それが連続的に続く場合とでは、その結果が大きく

かわることも実証されています。

最初に片方が一度裏切れば、2回目以降、もう片方も裏切る可能性が高くなります。

このように、組織における「全体最適よりも部分最適を優先する問題」については、

ゲーム理論のフレームワークを使って分析すると、非常にわかりやすく理解すること

ができます。

ただし、それは「理解できる」だけであって、その問題の解消には、

泥臭い「信頼」や「ビジョン」などをベースにしたマネジメントが必要不可欠だということ

だと思います。


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2011年08月09日

なぜ全体最適より部分最適が優先されるのか part1

カテゴリー:マネジメント

組織の問題を考える際に、必ずといっていいほど、出てくるテーマがコレ。

個人でも、チームでも、事業部でも、組織全体の運営を効率的に

行なうために、機能的につくったヒエラルキーやセグメントが、いつの間に

組織にとって、効率どころか非効率の原因になってしまっているという問題。

皆が協力しあえばお互い得られる利益が大きいのはわかっているハズなのに

なぜか裏切ってしまう。

こう見ると、まさにこれはゲームの理論の典型だと思います。

「囚人のジレンマ」に代表されるような協調・裏切りゲームの典型です。

AチームとBチームの2つのチームがあったとします。

AチームとBチームが互いに会社にとって必要な協調的な行動を取れば、

それぞれに3の利益が入るとします。

どちらかが自分のチームの利益を優先して裏切り行為を行い、

もう片方は相手を信じて、協調行動を行なったとすれば、

裏切ったチームには5の利益が、協調をとったチームには

利益が全く入りません。(ゼロ)

互いに裏切り行為を行なった場合には、

それぞれに1の利益が入るものとします。

さて、このような構造に陥った場合、AチームもBチームも

明らかに、裏切り行動を取った方が獲得する利益が高くなる

可能性が高いわけです。

しかも、最悪なケースは自分は協調行動をとり、

相手は裏切り行動をとった時なので、それだけは避けたいという

リスク回避の心理も働きます。

この状態が組織に内在していた場合には、チームから見れば、

裏切り行為が「合理的」という見方もできるわけです。

さて、このような状態の解消にはどうしたらよいのでしょうか。

1つは、この互いがとった行動によって得られる利益(0や1や3や5)が

のバランスについてです。

いうまでもなく互いが協調行動をとった際に得られる利益(3.3)よりも

例えばAが協調行動、Bが裏切り行動を取った際に得られる利益(0.5)の

方が、裏切り行為を行なったBにとっては大きいので、裏切り行動を選択

するわけです。もちろん自分が出し抜かれたときには逆の事も言えます。

1つ目の視点は、この数字のバランスを上手く変更する事ができないか

という視点です。

すなわち、裏切り行動をとった時の利潤が低く、または協調行動を取った

際の利潤が高いというルールです。

実際、企業ではこれらをインセンティブや報奨制度、一部では懲罰制度などで

ルールの枠組みを管理します。

会社にとって利益が大きい、協調行動を行なった際には報酬を、

自分勝手な裏切り行動をとった際には懲罰を与えるというものです。

これによって、「囚人のジレンマ」ゲームにおける利潤の配分ルールを

変えようというものです。

これも1つ、ベーシックな対策方法ですが、短期的な効果は望めても

中長期的には、またもとのゲームの理論に戻ってしまう可能性が

高いものでもあります。

それでは?

続きはまた次回。



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2011年08月08日

競争戦略を考える

カテゴリー:競争戦略

競争戦略、つまりその市場や業界において、他社に比べていかに

競争力を持つかというテーマは、商売をやる上で最も重要かつ難しい問題の

1つと言えます。

色々考えると、手法としては沢山あるけれど、

やはりマイケル・ポーターさんがいうように、競争戦略は結局大きくは

コストリーダーシップ(コストで優位性を確立する)か、

差別化戦略(コスト以外で優位性を確立する)

かのどちらかしかないのだと思います。

もちろんその2つの合わせ技という強力なパターンもあります。

つまるところ、「何で他社と差別化していくか」、「何で違いを訴求するか」

ということなんですが、これがなかなかに難しい。

仮に、他社がやっていないような新しい商品や販売方法を思いついたと

します。実際にその価値も高いとします。

それでも、ここで、更に考えなければならない視点は、模倣困難性です。

それは、他社がすぐに真似できてしまうようなものなのか、

模倣するにはかなりのコスト(時間も含めて)がかかってしまうもなのか。

前者であれば、その差別化ファクターは一時的なもので、

時間の経過と共に、そのうまみが薄れてしまう可能性があります。

それも自社の利益を十分に獲得するまでの時間的余裕があれば良いのですが

近年の情報伝達の速度を考えると、自社でその経済的パフォーマンス

の全て獲得する前に、他社に真似されてしまう可能性が十分に考えられます。

この視点は「ベストプラクティス」を学び、自社に取り入れようとする際にも

注意すべき点の1つです。

他社でうまくいった差別化要素を、自社に取り入れ、かつそれによって

あらたな利潤を獲得できたとしたら、逆にその段階で更にその先の

別の差別化要素を考えておかなければならなりません。

なぜなら、おそらくその模倣した他社のベストプラクティスは更に別の競合

企業もすぐに真似をし、利潤を獲得する可能性が高いからです。

コンサルティングにおけるベストプラクティスモデルのジレンマは

ここにあったります。

競争力をつけるために業界の成功事例をモデル化し、そのまま別の企業に

展開するモデルは、競争力をつけるための手段であるはずなのに、他方で

その差別化要素をコモディティ化し、更なる競争市場をつくりあげてしまう

というジレンマにぶつかるのです。

それを考えると、ベストプラクティスモデルは、常に半永久的に

別のベストプラクティスを探し実行し続けなければならないということになります。

また、本当に知りたい市場のトップ企業などの差別化要素は、

本来もっと模倣困難性が高いファクターである可能性が高いとも言えます。

だから、その企業には勝てない。

すぐにまねできる事が最大の差別化ファクターだとしたら、

既に今真似されているはず。

このあたりも実は本質であったりもします。


個人的にもこの

「何を差別化要素にすべきか」

「それは希少性のみならず模倣困難性もあるといえるか」

「他社の成功は知ってるが、それが本当にこの会社にマッチするのか」

という問いかけは常に自問自答し続けているわけです。


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2011年08月07日

リアルオプション価値

カテゴリー:経営戦略

リアルオプションの概念については、以前にもここで触れたことがありますが、

いろんな意味で今はこの価値の重要性を改めて確認する時期にあるように

感じています。

リアルオプションの概念から得られる重要なインプリケーションは、

事業環境が不確実であるとき、企業がいますぐの投資実施から生じる将来の投資

に関する権利の消失を機会費用とみなし、事業価値が投資コストを十分に

上回るまで事業への投資を延期すべきであり、さらに、不確実性が大きくなるほど、

機会費用を重大に考慮し、投資をいっそう延期すべきであるという視点が定量的に

捉えられるという事です。

結果として、最適な投資の意思決定は、事業価値が投資コストに機会費用を加えた

総費用を上回るとき、企業が投資すべきであるということになります。

要するに、不確実性が高まれば高まるほど、リアルオプション価値は高まるということ。

さて、リーマンショック以後、この柔軟性の価値をはかるリアルオプション価値がが

企業経営においても、重要な視点となっていると言えます。

大きな地震や津波が起こった時、

世界経済が低迷したとき、

市場が急速に縮小していこうとした時、

「これしか生きる道がない!」っていう企業と

「柔軟にいくつかの選択肢の中から選択できる」企業とでは

どちらの方が有利と言えるでしょうか。

難しいのは、平常時にはむしろ前者の方が売上や利益が高くなるケースが

多くて、その結果、事業や企業の価値も高く評価されるケースがあるということです。

(柔軟性を担保するためには一定のコストがかかるので)

しかし、この柔軟性の価値を定量化し、現在の事業や企業の価値付加できれば

事業や企業の価値判断、もちろん投資判断も見誤らない。

これがリアルオプションです。

よくバブル崩壊以降、それまでの過剰投資によってバランスシートも社員数も

設備投資もみんな大きくなりすぎてしまった日本の企業経営の在り方に対し

周りからは、「選択と集中」が必要だと言われてきました。

以降、コア・コンピタンス経営という言葉にも後押しされて、多くの企業が

経営のスリム化を図っていったわけです。

今回の東日本大震災の後、効率化を追求した故におこった

サプライチェーンのほころび、リスクへの対応へのまずさなどを見て、

これまでの「選択と集中」的経営を否定する向きも強まっているようです。

しかし、リアルオプション的な見方からいえば

この「選択と集中」の意味するところは、「それしかないからそれを選択し

それだけに集中した」とか「他のものは一切はぎ取る」というものではなく、

「他にも選択肢は残っているけど、今はその複数の選択肢の中からこれが

最も有利だと思われるものを選び集中している」という意味に捉えられる

べきものであるといえます。

後者の意味、つまり、「本当に今必要なものを選んで集中している」

という意味であれば、それは柔軟性を担保した状態であり、リアルオプション価値も

高い企業と評価されると言えるでしょう。

不確実性が異様にたかまる今、私たちはリスクマネジメントの観点も踏まえて、

リアルオプション価値を十分に評価し、経営戦略に組み込んでいく必要がある

のだと思います。


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2011年08月06日

米国債、格下げの衝撃と影響

カテゴリー:経済ニュース

米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が今日、

米国の長期格付けを「AAA」から「AA+」に1段階引き下げたと発表。

米国の長期格付けが引き下げられるのはこれが初めて。

しかも見通しは「ネガティブ」、今後さらにもう一段階引き下げられる可能性も

あるというわけです。

基軸通貨国の長期債権の格付けが引き下げられるという意味は

想像以上に大きいはずです。

イメージでいうならば、金融市場における地盤が動く、とか、元となる地図が

変わってしまうというくらいのインパクトがあります。

米国債の発行残高は約9兆6千億ドル(約800兆円)。

トリプルAを維持し米国債と並ぶ安全資産の独国債の4倍程度。

もはや市場において米国債に変わるものはないわけです。

そんなおり、イタリアのベルルスコーニ首相がフランスのサルコジ大統領ともに

G7の緊急財務相会議の開催を要請してきました。

今、欧州ではイタリアとスペインが窮地に立たされています。

少し前まで欧州はギリシャ危機と言われていましたが、とはいうもののギリシャの

経済規模は極めて小さい。

イタリアとスペインはユーロ圏(17カ国)での経済規模がそれぞれ3位と4位。

その2カ国の10年債利回りがいずれも6%を超えていて

危険水域の6・7~7%に近づいているのです。

ユーロ導入国を支援する「欧州金融安定化基金」でユーロ圏が負担する

4400億ユーロ(約49兆2300億円)ではイタリアとスペインを救済することは

不可能です。

欧州もそんな大変な状況の時に、今回の米国債の格下げです。

欧州も厳しい、米国もしんどい、日本はいうに及ばず、中国もバブルがいつ暴発しても

おかしくない状況。

個人的には世界経済の2番底懸念が顕在化し始めてきたようにさえ思います。

週明けのマーケットの動きが気になることろです。

お盆を前に、そしてリーマンブラザーズの倒産から間もなく3年が経とうとする今

世界経済はまた一つ歴史上、新たな段階に進もうとしています。



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2011年08月05日

行動ファイナンスとゲームの理論

カテゴリー:経済学

経済学においてモデル化されている様々なフレームは、

あまりに現実味のない所与の条件が多く、プラクティカル(実践的)でないという

批判はかなり大昔から言われてきたことだろうと思います。

市場に参加する人はみな完全に同じ情報を持っているとか

価格は決まっており供給者も需要者もプライステーカーだとか

企業は利益最大化、消費者は効用最大化の原則に基づいて合理的に行動

するとか、様々な現実ではありえないような前提に基づいて、

理論が構築されています。

もちろん、それでもこの数百年の間に構築された様々な経済学モデルは、

全く役立たないし、意味もないという事ではりません。

これらの少々無理な前提を置いたとしても、

知りうる価値のある世の中の仕組みやルールを明瞭化させた意義は、

それでも偉大な功績だと思うのです。

しかし、近年の最新の金融工学モデルの発達や、更にはそれをも

打ち砕くリーマンショックのような大きな経済ショックが生まれる現実などを

みていると、より一層伝統的な経済モデルに対する修正が必要な時代に

入ってきているのではないかと感じてしまいます。

そこで、近年、この世界でも頓に注目されつつあるのが、

行動ファイナンスやゲーム理論の世界です。

行動ファイナンス(行動経済学)とは、上記のような典型的な経済学のように

経済人を前提とするのではなく、実際の人間による実験やその観察を重視し、

人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを

目的とした経済学の総称です。

ゲームの理論は、経営学の競争戦略においてもかなり参考になりますが、

相手との相互作用を前提に相手の行動や自分の行動を分析する理論です。


最近では、行動ファイナンスから更に進んで、神経経済学(ニューロエコノミクス)

といわれるような分野もあるそうです。

これは、生理学、神経科学の観点から経済行動を分析する学問で

簡単にいってしまえば、「脳はどんな情報にどう反応するか。」ってことを

科学的にも立証しながら、それらを元に経済学モデルを構築するって

感じでしょうか。

ここまでくると、少し恐ろしささえ感じてしまいます。


人は不確実なものに対して何らかのルール化、一般化して安心したいという

欲求が、根幹にはあるのだと思います。

しかし、不確実なものは不確実なわけだし、生きている限り不確実性が

なくなることはないというのも紛れもない事実です。

様々なルール化には、常にこのジレンマを抱えているのだと思います。

ゲームの理論については、競争戦略とも密接にかかわってきますので

またこの場でも何度か取り上げていきたいと思います。



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2011年08月04日

管理ビジネスの生産性向上について

カテゴリー:不動産管理業

賃貸管理にせよ、分譲管理にせよ、そしてPM、ビルメンも含めて

あらゆる不動産管理事業において今、あらためて

生産性の向上という視点が見直されています。

その前提は

「顧客が払ってもよいと認める最高価格(WTP:Willingness to pay)

が年々減少している」

からといえます。

企業の利益とは言うまでもこのWTPとコストの差です。

根本的には、付加価値をつけてWTPを挙げるか、生産性向上や

諸処のコスト削減努力によってコスト全体を削減するかの

いずれかにしか、その方法はないわけです。

しかし顧客からみて不動産管理に支払う費用は、基本的には安いに

越したことはないわけです。

顧客にとって不動産管理という業務は本業ではなく、

本業をささえる「シェアードサービス」の一部です。

管理会社は顧客から見ればこの「シェアードサービス」を

アウトソーシングする際の「サービスベンダー」に他ならないといえます。

自社のコア事業ではない部分については生産性の観点から

積極的にアウトソーシングするべきだという考え方が、一昔前には

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などと呼ばれ、話題となりました。

逆に言えば、顧客から見ればアウトソーシングされている不動産管理業務は

コスト以外の何者でもないということ。

当然、コストはできるだけ抑えたいというのが顧客の思いです。

では、管理会社はどうするか、それに対応した値づけにチャレンジするしか

ありません。

その際に、コスト構造がそのままであれば、当たり前ですが利益は減る一方です。

だから生産性を上げるしかない。

生産性をどうあげるか。

これも上記の考え方を逆に利用できます。

管理会社としてコアな業務以外については極力サービスベンダーを利用して

アウトソーシングするという発想です。

内製化する業務と、外注する業務を、「生産性」という基準をベースに明確に

分離していくという考え方です。

もちろんアウトソーシングは、アウトソーシングに根づくリスクも少なくありません。

製造メーカーをはじめとする日本企業の多くが、以前に比べ

「垂直統合戦略」から「得意機能特化」、「大きい事はすばらしい」から「スピード経営、

筋肉質経営」へ移行する中、管理会社の経営もまた、機能特化、コアコンピタンス特化

に体質を改変させていく必要があるのだと思います。


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2011年08月03日

米債務上限引上げ法成立後のマーケット

カテゴリー:経済ニュース

世界中がその動向に注目していた米国債務上限問題。

昨日、オバマさんが、米議会を通過した政府債務上限引き上げ法案に署名し、

同法が正式に成立しました。

「なんだかんだやっても結局は最後は法案通すんでしょ。さすがに米国債を

デフォルトなんかにできなんだから~」

と鷹をくくっていたものの、あまりに上院・下院での審議が進まないから、

市場も少し不安になって、ドル安円高に。

このストーリーでいえば、「やっぱり通ったじゃん!」と落ちがつけば、為替も

回復するはずですが。

上院での法案通過後、一時的にドル買い需要が高まり、ドル高円安に流れた

ものの、それもつかの間。

1ドル78円を付けたころからは、それ以上の伸びが悪く、

結局再び77円台に。

そしては今日は76円台後半も。

さて、これはどう考えるべきでしょうか。

私的な意見としては、ドル安円高基調は、単に「債務上限引上げ問題」という

イベントに対するマーケットの短期的な動きではないと思っています。

つまり、例えば

1. そもそも米国の財政赤字問題の根本的な部分は変わってない。

2.結果的に格付け会社による最上級の格付けを失う可能性はまだゼロではない。

3.世界最大の経常赤字・対外債務国がゼロ金利政策を実施しているという現状は

そもそも、常にドル売り圧力さらされている。

4.2QのGDPなど、ファンダメンタルズに関わる各種経済指標が低迷している。

といったように、そもそも現状のファンダメンタルズからみても、常識的に

ドル安円高圧力が強く働く状態にあると思っています。

今日も、政府・日銀が円売り介入を具体的ににおわせる報道があったようですが、

これも、やはり一時的な効果しかないというように思います。

少なくともあと1年ぐらいはこのトレンドは変わらないのではないかと思っています。

どうなりますか。



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2011年08月02日

1つの企業が複数の事業を掛け持ちする意味

カテゴリー:経営戦略

ある会社が新規事業の立上を検討しているとします。

これまでやってきた事業をA事業。

今から立ち上げようとしている事業をB事業とします。

B事業には十分な将来性もあって非常に魅力的な事業。

しかし、この会社がわざざ自社で2つの事業を同時に行なう価値・理由が

「単に儲かりそうなビジネスを2つやってます」

というだけでは、あまりにバックリするわけです。

私たちは通常2つの条件をつけます。

1.2つの事業を持つ事によっていわゆる事業ポートフォリオの観点から

リスクが分散されるのか?

2.2つの事業を独立した別会社がそれぞれ単独で行なった場合の事業価値の

合計値を超える価値が、1社で行なった場合、創出できるのか?

この2つです。

1つ目はリスク分散の話です。

ただし、これには更にもう1つの制約を設けてみたいと思います。

それは株主の観点からみるとわかることです。

株主は保有する複数の株の持株比率をかえることによってこの

リスクの分散効果を容易に享受することができるわけです。

逆に、多角化経営とは1社の中に複数の事業を内包してしまうので、

株主自身ではそれらを動かす事ができないわけです。

つまり、株主が株式市場で享受できる分散投資効果と、多角化による

分散効果を比較するという視点が必要であるということです。

2つ目の視点は、一般的に範囲の経済性効果やシナジー効果といわれる

効果をちゃんと期待できるかどうかという話です。

単独で別の会社が経営したA事業の事業価値(A)

同じく単独で別の会社が経営したB事業の事業価値(B) とすれば

1社でA事業、B事業同時にやる価値は(C)は

(C)>(A)+(B)

であるべきなのです。

この(A)+(B)を超える部分が範囲の経済性効果やシナジー効果

によって得られる追加的に価値と言えるのです。

これから新規事業を立ち上げようとされれている方、また現在すでに多角化経営

を展開されている方、一度このような視点で現状を再評価してみる必要が

あるかもしれません。


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2011年08月01日

リスクと事業戦略

カテゴリー:経営戦略

大変、ご無沙汰しておりまして、申し訳ございません。

今日から8月に入りましたので、徐々にこちらのブログのほうも

再開させて頂きたいと思っています。

さて、今日のテーマは「リスクと事業戦略の関係」について。

一般的によく「ハイリスク・ハイリターン」や「ローリスク・ローリターン」

という言葉で、リスクとリターンの関係性、相関性について語られる事が

多いのですが、基本的にはこの

「損失をこうむる可能性と利益を得られる可能性は同程度」

というイメージはあながち間違ってはいません。

企業がもし全くリスク(下方リスク)を取らないとすれば、利益を得られる

ことはない、またはその可能性は極めて低いと言えるでしょう。

高いリスクをとれば、得られる利益が高くなる可能性も大きいということです。

つまり企業が選択する事業戦略とは、換言すれば「リスク選好」が可視化された

姿と言えるのです。

更に、この企業が選択する「リスク選好」と同様の選好を持つ株主を

この事業戦略が誘引するということも言えるでしょう。

結果、これらが事業の資本コストを最終的に決定するという構造が

見えてくるわけです。

震災以降、企業におけるリスク対策と言えばBCPや災害時の対策等に

注目の的が集中しがちではあります。

しかしリスクマネジメントという概念で言えば、リスクをとるという行為そのもの、

またそのリスクをマネジメントする行為そのものが経営そのものであり、

事業戦略の根幹に根付いたものであると言えるのだと思います。



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