コングロマリットディスカウント
企業が複数の事業を保有する多角化戦略は、一般的には
その有用性以上に、リスクについての懸念点が多いというのが、
このコングロマリットディスカウントという言葉には内包されています。
コングロマリットディスカウントとは、
企業全体の価値が、個別の事業部分の価値の総計に比較すると
低いという事を指します。
つまり、多角化経営の本質がリスク分散やシナジー効果による
効率的経営にあるという理念からすると、この話はむしろ逆の
意味を指すことになります。
過去の様々な論文における実証分析においても、この事を裏付ける
データが多く存在しています。
このような現象が生まれる要因を少し分析してみると、次のような
事が考えられると思います。
第一に多角化をはじめとする企業が複数の事業を持つ事のメリット
は、前述の通り、1にリスク分散、そしてシナジー効果による効率的
成長(規模の拡大を含む)だと言えるでしょう。
そう考えると、例えばマーケットがコングロマリットディスカウントを認識し
多角化経営企業に対して、通常の単一事業体の事業価値合計よりも
低いと評価しているとすれば、その背景はどこにあるのでしょうか。
これは結果的には、理論上は多角化の価値である
「リスク分散」と「シナジー効果」を投資家は評価していないということになります。
「シナジー効果」についての評価は、確かに難しいものがあります。
指針や戦略の方向性においては、例えば「顧客やチャネルなどを上手く共有化
することでシナジー効果を追求する」という美辞美麗が並びますが、
実現するのはそう簡単な話ではありません。
また、これはある意味「リスク分散効果」の裏返しともいえるかもしれませんが、
複数の事業に投資や力を分散させるということは、当然1つの事業に対する
力や投資の量は必然的に減ることになり、成長性という観点で魅力が欠ける
という見方も出来ます。
次に「リスク分散効果」に対する見方ですが、確かに1つの事業に集中的に
投資や力を注ぐと、他方でリスクを増大させることに繋がるため、
それを分散させるという意味で複数の事業を持つ事の必然性が生まれるのですが、
よく考えてみれば、投資家の観点からすれば、そのリスク分散は
「既にマーケットで自ら主体的に取り得るもの」であるということです。
つまり、ある1社が1つの事業に集中投資するような企業だったとしても、
その事業とは相関の低い別の事業に集中投資する企業にもう1社投資しておけば、
投資家からみたポートフォリオによるリスク分散効果は、
それで十分に担保される事になるわけです。
つまり、1社の中でのリスク分散効果は、投資家がマーケットを通して実現できる
リスク分散活動と比較した優位性が存在しなければ、意味がないという異なります。
そう考えるとこの「リスク分散効果」も投資家から見れば、それを大きな
魅力と感じる事ができる企業はごく僅かといえるのではないでしょうか。
このように、コングロマリットディスカウントが生まれる背景は、
少し分析してみると、当たり前のように理解できるとも言えるかもしれません。
では、多角化戦略(複数事業の展開)の意義は全くないのか?
私が今、最も関心のあるテーマの1つですが、もちろん答えはNoです。
そんなことはありません。
多角化の持つ本当意義、シナジーの本当の意義は別のところにもあるわけですが。
それはまたページを改めて、お話していきたいと思います。














